ADHDのキャバクラ嬢が借金完済し「いくら稼いでいるのか分からない」境地に至るまで

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1時間お茶をするだけの「パパ活」

 彼女が見せてくれたスケジュール帳アプリには、週2回、1時間ごとに何件かタイムテーブルが組まれている。これは、パパ活のスケジュールだという。キャバクラと合わせ、パパ活アプリで会ってお小遣い稼ぎをしている。

 パパ活は肉体関係を持たないとお金をもらえない、いわゆる援助交際の言い換えではないかと思っていたが、ホノカさんの場合、賢い方法でパパ活していた。

「基本的に1時間お茶をするだけです。最初の10分で入るお店を決めて、残りの40分でパパの仕事の内容や、その人が話したがっていることを聞き出します。出張キャバクラみたいな感じですね。それで、パパの心を開いていって、残りの10分で関係を続けるかどうかの話もします。

 こないだも、私の話を気に入ってもらい、15万円するPRADAのパスケースと財布のセットを買ってもらいました。キャバクラの給料と合わせると、いくら稼いでいるのか、もう分からない状態です」

 今まで、人気風俗嬢を取材したこともあるが、稼いでいる人に共通しているのが「いくら稼いでいるのか分からない」ということだ。逆に、稼げていない風俗嬢ははっきりと金額を覚えている。

 今のホノカさんの夢は、自分の店(キャバクラ)を持つことだという。最後にホノカさんはキャバ嬢としての名刺をくれた。私はそっと手帳のクリアケース入れに名刺を挟んだ。

 取材を終え、サンローランのバッグとこれまたハイブランドのものであろうシンプルなサマーニットにパンツスタイルで、さっそうと去っていくホノカさんに、私には持ち合わせていない「賢く生き抜く術」を感じ、憧れに近い感情を抱いた。

 私はキャバクラに行ったことがない。一度行ってみたいと友人のキャバ嬢に申し出たところ「リピーターになるような男の人と一緒に来なきゃダメだよ」と言われて諦めたことがあるが、店によって方針が違うらしい。ホノカさんの店は女性だけでも入れるそうなので、私のキャバクラデビューはホノカさんの勤務する店になりそうだ。

姫野桂(ひめの けい)
宮崎県宮崎市出身。1987年生まれ。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをして編集業務を学ぶ。現在は週刊誌やWebで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)。ツイッター:@himeno_kei

2019年7月12日掲載

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