ADHDのキャバクラ嬢が借金完済し「いくら稼いでいるのか分からない」境地に至るまで

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「私の虜にするぞ」という意気で接客

 予備校の先生に話すと「もうセンター入試も全部終わってるけど、一般の中期でこの学校だったらまだ間に合う」と言われた大学を受験し、合格した。どのくらいの偏差値の大学なのか尋ねるも、ホノカさん自身「偏差値」というものを考えたこともないという。

「一夜漬けで勉強して受かっちゃった感じです。情報系の私立大学で、とにかく東京に出たい一心で赤本を解きました。親からも、大学の近くに親戚が住んでいることから上京を承諾してもらえました。

 それで晴れて4月から大学に入ったのですが、情報系の大学なのでパソコンの授業がメインです。もう、パソコンが嫌すぎてぶっ壊しちゃいました。でも、マーケティングや消費者心理に関する講義を取って徹底的に学び、それが今のキャバクラに活かされているのではないかと思います」

 なかなかファンキーなエピソードである。パソコンは壊したが、なんとか単位は取った。そして、それまでヴィジュアル系が好きだったのが突然、グループサウンズ系の音楽にハマった。ヴィジュアル系と真逆である。大学の図書館にあるCDを片っ端から借りて聴いていった。大学では情報の勉強より音楽の勉強に精を出した。

 友達は少なく、ノートを写させてもらう友達と、出欠を代返してもらう友達と、一緒にライブに行く友達の3種類しかいなかった。しかも、男友達ばかりで「基本、私みたいな性格の女は女の子に嫌われるんです」と、ホノカさん。

 そして大学在学中、友達の紹介でランジェリーパブでバイトを始めた。私自身、風俗店で3年ほどバイトをしていたが、キャバクラやクラブなどの水商売のことはさっぱり分からない。ランジェリーパブのシステムについて教えてもらった。

「システムはキャバクラと一緒なんですけど、着ているものが下着です。店によってコンセプトは異なりますが、私はブラジャーにTバック、そしてキャラ付けのためにガーターベルト姿で接客していました」

 私の脳内で、イケイケギャルたちがギラギラの素材のビキニを着て踊る姿が再生されたが、ホノカさんの店ではショーはなかったそうだ。それより、そんな格好で接客をすると身体に触られたりしないのだろうか。

「逆にビビってみんな触ってこないんです。『すごいね、このTバック』とか『自分に自信がないとそんな格好できないよね』みたいな反応で。だから、普通のキャバクラよりセクハラ的な意味では安全かもしれません」

 今、ホノカさんは普通のキャバクラで働いている。その給与システムもわからないし、キャバクラと私がよく知っている風俗とでは業界用語も違う。

「キャバクラはお客さんに『ドリンクいただいてもいいですか?』と聞いて一緒にお酒を飲むのですが、例えばドリンク1杯1000円だったら、女の子にはだいたい200円のバックが入ります。一晩で5杯飲んだら1000円もらえる感じです」

 正直なところ、想像より稼げない、シビアな値段に感じてしまった。

「今は一晩でだいたい30杯くらい飲むので、もうお腹ポチャポチャですよ(笑)。あと、『場内指名』というシステムがあって、『君、気に入ったからずっとここにいて』と言われたらバックが1000円入るので、『私の虜にするぞ』という意気で接客します」

 もう駆け引きである。「男は射精できればなんでもいいから、そこまで気を張りすぎないで。疲れちゃうから適度に手を抜いて」と、風俗勤務時代、スタッフに言われており、ゆるゆるとホワイトな環境で働いていた私からすると、男性心理を研究しつくさないとキャバクラで稼ぐのは難しそうに思えた。

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