不労酵素で夢の若返り!? 50代を20代に戻す「NAD」とは? 研究チーム教授が解説

ドクター新潮 健康 長寿

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今井教授が解説

 ともかく、今井教授の話に耳を傾けてみよう。まず、今回の発見でなにがどう変わるかだが、

「いままでの医療が、それぞれの症状を一つひとつ個別に抑えるものだったとすれば、NADを使った医療は、老化という根っこをつかまえ、そこから派生する病気すべてを抑えてしまう予防医療です」

 と、やはり夢のようなことをのたまう。ニコチナミド・アデニン・ジヌクレオチドの略だというNADは、今回の話の核のようなので、もう少し詳しく説明してもらうとしよう。

「あらゆる生物はNADを、各臓器がエネルギーを使うときに必要な通貨のようなものとして利用しています。なかでも、長寿遺伝子サーチュインの一つ“SIRT1”は、NADを使うことで、視床下部の神経細胞を活性化し、全身のさまざまな機能を回復させることがわかっています」

 ちなみに、視床下部とは間脳にあって、内分泌や自律機能を調整する総合中枢のことである。

「視床下部は交感神経系を通じて骨格筋に信号を送り、体内の脂肪は“NAMPT”という酵素を分泌することで、各所でNADの元になる“NMN”の合成を促し、全身のNADの量を調整しています。つまり、コントロールセンターである視床下部と、効果を与えるエフェクターとしての骨格筋、信号を変容するモジュレーターである脂肪が、NADを共通項にしてたがいにコミュニケーションをとっている。この臓器間ネットワークを“NADワールド”と呼んでいます」

 少々ややこしいが、もう少し丸めてもらうと、

「従来は個々の臓器の老化が問題とされましたが、NADワールドという概念を通すと、各臓器は密接につながり、影響し合っていることがわかります。なかでも視床下部の役割は重要で、歳をとってNADの量が減るとSIRT1も不活発になり、視床下部自体の老化につながる。こうなるとドミノ倒しのように、他の臓器に老化が伝染します。逆に、NADの量を一定に保てれば、老化自体を食い止められると考えられます」

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