孤独死した「飯島愛さん」 大ベストセラーが生んだ悲劇を振り返る【平成の怪事件簿】

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自殺とはみていない

 いったい、飯島愛にまつわるこれらの“覚せい剤騒動”をどう見れば良いのだろうか。
 
 簡易鑑定で使われた検査キットには、誤差が生じたり、他の物質に反応するなどの誤診がよくあるという。しかし、あの“上申書騒ぎ”があるので、捜査員の中には、疑いが100パーセント拭いきれていないと感じている者もいる。
 
 ある刑事が推察する。

「考えられるのは、三つのケース。まず一つは、孤独で寂しいあまり、かまってほしくて、あることないことを供述するケース。これには、注目を集めたいという思いも混じっているでしょう。二つ目は、妄想のケース。睡眠導入剤のハルシオンや抗鬱剤を服用し、精神的に不安定だった彼女が朦朧とした頭で、自分が覚せい剤をやっていると思い込んでしまったというものです。そしてもう一つは、遠い昔に覚せい剤を使った経験があり、やはり朦朧とした妄想状態の中で、その過去の記憶がごっちゃになって、現在のことと思い込んでしまっているケースです。そのいずれかじゃないでしょうか」

 むろん、これは推測にすぎず、本人が死亡してしまっている今では、真相は藪の中だ。

「死因に関しては、医師から処方された、ハルシオンなどの薬物の大量摂取によるショック死ではないかという見方が、捜査員の中には多いですね。恒常的に、また直前にも大量の薬を飲んでいたようですから。体はショック状態だったと思われます。警察は自殺とは見ていません。遺書はありませんでしたし、部屋で倒れる際も、本人自身は最後まで、死ぬとは思っていなかったものと見ています」(警視庁関係者)

 2005年の「新潮45」のインタビューに応えて、飯島愛はこうも語っていた。

「今何をやりたいか、これからどうしたいかなんて、私あまり考えてないんですよ。夢もないし。自分を飾ったり誇張したり、嘘で固めるのも嫌。私が番組に出演してしゃべっている事は、特に準備している事じゃない。学校でのイジメや親子などのテーマで話し合ったとしても、その時に私が感じるままを話しています。おかしい、不自然だと感じる事は絶対譲れないと思っているので。自分の思いに嘘はつきたくないから……」
 
 本来は内向的、そして自分に嘘をつけない性格。不良の家出少女、ホステス、AV女優から人気マルチタレント、文化人という稀有な道を歩んだ飯島愛の人生は、あまりにも短く、まるでジェットコースターが全力で勾配を疾走するような、劇的なものだった。そしてレールから外れ、最後はこなごなに壊れ散ったのだ。
 
 都心の一等地、渋谷のインテリジェントビルの最高層での孤独死……。

『プラトニック・セックス』の本当の最終章は、こうして悲劇で幕を閉じたのである。

上條昌史

週刊新潮WEB取材班

2019年4月27日掲載

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