タイガー・ウッズが「不倫」「性依存」「薬物」から復活するまで

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 ゲームの世界のように、ボタン一つで息を吹き返したわけではなかった。

 タイガー・ウッズ(43)が14年ぶりにマスターズを制した。メジャーVは11年ぶり。猛虎復活である。

 周知の通り、タイガーといえば、2009年秋に不倫スキャンダルが発覚。自身がセックス依存症であることを告白した後、離婚した。17年には薬物の影響下で車を運転したとして逮捕されている。たびたび世間を騒がせる一方で、腰を痛めて何度も手術するなど身体もボロボロに。世界ランキングは一時、1199位まで後退した。

 再起不能と思われた男はいかにして復活したのか。

「理由は一つではありません。いろんな要素が重なったのだと思います」

 とゴルフジャーナリストの舩越園子氏が語る。

“いろんな要素”のうち、氏が第一に挙げるのは“家族”。元妻との間に11歳の娘と10歳の息子がいる。

「タイガー曰く“子供たちが物心ついたときにはどん底だった。メジャー優勝を見せたい”。昨年9月に5年ぶりのツアー優勝を果たした際も、子供たちは現場におらず、映像でしか見ていなかったそうです」

 今回は子供たちも駆けつけ、優勝後、グリーン奥で熱い抱擁を交わした。

 凋落したタイガーの元をコーチが去り、キャディが去り、多くのスポンサーが去った。だが、子供たち同様、タイガーに寄り添い続けたのが、

「ナイキです。不採算のクラブ事業からは撤退したものの、ウェアやアクセサリーは継続し、タイガーとの契約を維持し続けました」

 意外なことに、ライバルたちも彼を支えていた。

「犬猿の仲と言われたミケルソンは、秘かにタイガーに激励のメールを送り、17年のプレジデンツカップでは副キャプテンに推挙しました。また、18年ツアー復帰に向けて、タイガーのすっかり鈍っていた小技を磨く練習に付き合ったのは若手のR・ファウラーやJ・トーマスでした」

 4度にわたる腰の手術も重要な要素だった。

「思い切って手術を行い、運よく成功した。それがなければ今回の優勝はなかったでしょう」

 また、この年齢にして技術的な進歩もあった。

「ロングパットをいくつも決めていたので、勝因はパットかと思ったら、タイガー本人は“ドライバーだ。6カ月前から対策を立て、ドライバーで左右にコントロールする新たな技を習得した”と言っていました」

 極めつきは、彼の“表情”。テレビ観戦でお気付きの方も多かろうが、昔は常にピリピリしていたタイガーが、今は泰然とプレーしているのである。

「“感謝”という言葉を頻繁に口にしますしね。大会2日目に係員が足を滑らせてタイガーを蹴ってしまうハプニングがありましたが、昔の彼なら“テリブル!(ひでぇな!)”などと怒るところが、“オーケー”と平然としていました。他人のミスも、自分のミスも許せるようになり、それが強さとなった。数々の苦難を乗り越え、寛容性を身に付けたのだと思います」

 これで通算81勝。史上最多の82勝まであと一つである。

週刊新潮 2019年4月25日号掲載

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