三代目組長の回忌法要 「山口組」が迎えた夏

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 気温34度。うだるような暑さも感じさせず、スーツに身を包んだ男たち。数珠を持ち手を合わせ、静謐な雰囲気をたたえてこそいるが、彼らは日本最大規模の指定暴力団「六代目山口組」の面々だ。並び立つ幹部たちの先頭で、焼香台の前に進んだライトグレーのスーツの人物は、司忍組長(76)である。

 7月23日、神戸市内の山口組総本部では、田岡一雄・三代目組長の三十八回忌法要が執り行なわれていた。山口組の「中興の祖」とされる三代目親分の祥月命日法要は、例年欠かさぬ重要行事。これまでは執行部が市内の長峰霊園に墓参していたが、今年は総本部内で営まれた。もちろん理由がある。昨年8月、霊園から総本部内の一画へ、(写真2)の歴代組長の名が刻まれた慰霊碑と、亡き直系組長の名が並ぶ組碑が移設されたためだ。

 事情を知る関係者がいう。

「もともと六代目が田岡家先祖代々之墓の隣に慰霊碑と組碑を建立したが、多くの組員が訪れるようになり、いつしか墓所一帯が山口組の聖地と化してしまった。2015年に神戸山口組が現れ、やがて任侠山口組と三つ巴の状態となり、田岡家の遺族も、墓前で万が一のことがあってはと不安を募らせていた。そこで六代目が、田岡家に迷惑をかけてはいかんと移設を決めたのです」

 そう、こうして総本部の敷地内に広がる穏やかな光景とは裏腹に、今なお、彼らのにらみ合いは続いている。この日も本部をぐるりと囲む石垣の向こうには、警戒網を張る兵庫県警の姿が。警察は組織解体を掲げて目を光らせ、敵対勢力は生き馬の目を抜かんと隙をうかがう。そして社会は一層厳しい視線を注ぐ……。

 慰霊碑の前で瞼を閉じ、三代目に想いを馳せたそのとき、六代目の胸中には何が過(よぎ)っただろうか。

週刊新潮 2018年8月2日号掲載

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