中国で拘束、実刑が下された「2人の日本人スパイ」 その素性と目的

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カード会社から督促状

 脱北者が激増し、丹東の中朝国境を流れる鴨緑江沿いに人民解放軍がフェンスを設置したのは9年前。

「あれ以降、中朝国境沿いでの当局の監視も厳しくなった。同じ外国人が何度も来たら、確実に行動確認の対象になる。ただし、今回拘束された男性は、行動は慎重でしたからね。一般旅行者に毛が生えた程度の情報能力で、スパイとかエージェントというレベルの人ではありません」(マスコミ関係者)

 山梨学院大学教授の宮塚利雄氏は、3年前、中朝国境の吉林省集安市で橋を撮影中、拘束されたが、

「突然、パトカーが5~6台現れ、20人程の警官に囲まれた。警察では、日本政府の指示で来たのか。政府から金をもらっているのか。政府の関係者か。この3つを聞かれました。私はいずれも否定し、罰金を払って、釈放されましたがね」

 つまり、日本政府との関係が明らかになれば、一発でアウトというわけである。

 一方、愛知県に住む男性は、浙江省温州市平陽県沖の南ジ列島にある軍事施設周辺で拘束された。この施設は、尖閣諸島周辺を管轄しているとされる。記念撮影のレベルを超える枚数の写真を撮影していたという。

 男性は、三重県の私立大学を卒業後、愛知県内の不動産会社へ入社。古くからの知人は、

「その会社は2年くらいで辞め、別の不動産会社へ転職しています。アメリカに不動産に関する勉強に行き、そのまま向こうでコンサルタント会社を設立したこともあった。しかし、それもうまくいかず、15年くらい前から中国で仕事をするようになった」

 家族は妻と息子2人。現在は、主に中国相手に人材派遣や貿易を行う会社の役員を務めている。が、一緒に役員を務める女性に聞くと、

「7年前に彼から出資しないかと言われ、少なくない額のお金を出しました。その際、書類にサインはしましたが、知らぬ間にこの会社の役員にされていて……。本当に迷惑しています」

 お金に困っていたとの証言もある。別の知人が言う。

「ベンツやBMWに乗ったりしていて、一見かなり羽振りがよさそうでした。しかし、今年の1月くらいまで借りていた事務所の電気代を滞納していたし、カード会社から200万~300万円もの支払いの督促状も来ていた。会社の経営は、決してうまくいっている感じではありませんでした」

 そんな折、公安調査庁から彼のもとに、中国の軍事施設の写真を撮って来てほしい、との依頼が舞い込んだのかもしれない。

週刊新潮 2015年7月13日神無月増大号掲載

特集「中国にノンプロ『007』を囚われた『公安調査庁』」より

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