1兆3千億円市場「民泊」に新法で「やめる人」「もぐる人」 撤退ビジネスも活況

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

「ホテルでも同じ」の声

「民泊が叩かれるのは新しいビジネスだからです」

 とは民泊ベンチャー「SHI」の高橋延明氏。

「ホストがゲストをレイプするなどの犯罪は論外ですが、許可を得たホテルでもいろんな事故・事件はあります。宿泊客である芸能人がスタッフを部屋に呼び出し襲ったという事件を記憶している人は多いでしょう。寝泊まりする場所を提供するということは、高い倫理観が問われます。それは民泊でもホテルでも同じであり、民泊だから叩くというのはおかしい」

 同社は創業3年目ながら、12棟の宿泊施設を運営。1泊2500円前後の部屋はフル稼働で、アジアからの若い旅行者たちで賑わう。

 賃貸経営を生業に世界を旅する「旅人大家」こと村瀬裕治さんはこう話す。

「民間のアイデアは面白いから民泊は規制しない方がいい。逆に民泊税をとってその税収を地域に還元し、観光客にも地域にも喜ばれる街づくりをしたらいいのではないでしょうか」

 観光庁のホームページには、「観光は、我が国の力強い経済を取り戻すための極めて重要な成長分野」とある。民泊も観光立国・日本を下支えする重要な施設となるはずだ。その一方で、前述の「住宅宿泊事業法」はこれに冷や水を浴びせることにもなろう。

 とはいえ、エアビーはNYにおける違法性の高い民泊で17年に4千億円超の収益を得た。他方、民泊により家賃が高騰したせいで、ニューヨーカーは約6千億円を余分に払うハメになったのだと、ニューヨークのデイリーニューズは伝えている。

 日本をこの1~4月に訪れた外国人旅行客は1千万人を超えた。これは史上最速ペースである。彼らを含めた旅行者を漂流させるか否か。その手綱さばきは、そうやすやすと行かないようだ。

吉松こころ(よしまつ・こころ)
暮らしジャーナリスト。1977年、鹿児島県伊佐市(旧大口市)生まれ。「株式会社全国賃貸住宅新聞社」取締役を経て独立。不動産業界のミニ通信社「株式会社Hello News」を立ち上げた。

週刊新潮 2018年6月21日号掲載

特別読物「1兆3千億円市場『民泊』に新法で『やめる人』『もぐる人』――吉松こころ(暮らしジャーナリスト)」より

前へ 1 2 3 4 次へ

[4/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。