なぜ子供も大人も「スタンプラリー」にハマるのか――彼らを虜にする秘密

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スタンプラリーはRPG

 物語の舞台は山手線を中心とし、北は赤羽、東は取手、南は蒲田、西は西荻窪と意外に広大なエリアだ。『指輪物語』(評論社文庫/J・R・R・トールキン/瀬田貞二、田中明子・訳)なら「中つ国」ということになる。

“勇者”は自宅を出発し、最初は7駅でスタンプを集める。すると1番目の宝物である「オリジナルステッカー」を入手する。経験値を高めていくと報酬が得られるという仕組みは「ドラゴンクエスト」などのRPGを彷彿とさせる流れだ。

 宝は成長に応じて豪華さを増す。39駅を達成すれば「描き下ろしイラストボード」、全65駅をコンプリートすると「オリジナルガンプラ」が得られる。東京駅や秋葉原駅にはスタンプラリーと連動した飲食物も用意されていた。これはエリクサー(霊薬・万能薬)だろう。これでライフポイントを復活させながら使命を果たし、故郷に帰還する――。

 宝を求めて旅に出て発見、入手して家に帰るという図式は、昔話の「桃太郎」とも同じだ。宝を「目的」と拡大解釈すれば、お伊勢参りに旅立つ『東海道中膝栗毛』(十返舎一九)といった文学作品とも通底してくる。実際、こうした民話や物語が文学となり、双六やRPGといったゲームも生まれた。人間の“本能”を刺激して当然なのだ。

「スタンプラリーの原点を大阪万博にしたとしても、まもなく50年を迎えるわけです。誰もが内容を把握し、開催するにあたりルールを説明する必要がないイベントというのは、実はそう多くはありません。マラソンは該当しますが、一般の人が気軽に参加できるものではないでしょう。そのような点が、参加者だけでなくイベントを企画する事業者側にもスタンプラリーが人気の理由だと思います」(同・シヤチハタ)

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