新幹線の車窓から気になる「三角屋根の住宅街」は絶景ポイントだった

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 今日10月1日、開業から50周年を迎える東海道新幹線。東京オリンピック開催に合わせて昭和39年(1964)に開業して以来、日本の2大都市間を高速でピストン輸送して高度成長を牽引してきた。

 便利になった東海道沿線には企業が集まり、工場や物流倉庫も建ち並んだ。人口がこの沿線に集中するようになる。新幹線開業前の東海道本線沿線を知る世代の人々は、沿線は激変したと言う。

 もっとも激変した車窓風景のひとつが写真の三角屋根住宅が建ち並ぶ平塚市日向岡(ひなたおか)付近の山であろう。新横浜を発車した下り「のぞみ」だと、12、3分で右側の車窓に見えてくる住宅群。多くの人が「知っている」と答える実に印象的な車窓風景である。しかし「知っている」と答えたほとんどの人が、この住宅群の所在地を知らない。

「地図神」として鉄道ファン、地形ファンから崇められる今尾恵介氏がその場所を先頃上梓した『東海道新幹線50周年記念 世界最速「車窓案内」』で取り上げている。

 同書は東海道新幹線の車窓からの景色が左右別々に書かれていて、三角屋根の住宅街は神奈川県西部、東海道新幹線の下りに乗ると右側に見えてくる。

「金目(かなめ)川を渡ると山が迫ってくるが、ひな壇に造成された上に色とりどりの日向岡住宅が建ち並ぶのを間近に見て出縄トンネルに入る」(同書より)

 出縄トンネルの先、三島付近までトンネルの連続する険しい地形となる。相模平野の尽きる直前に、文字通り日当たりのよい斜面に住宅が密集しているのだ。明るい色の壁が太陽光で浮かび上がって見える。

■三角屋根の住宅街は絶景ポイントだった

 住所は平塚市日向岡、東海道本線平塚駅からバスで20分ほどの場所にある。新幹線から見える三角屋根住宅群は日向岡2丁目の約130軒。造成を始めたのは昭和50年後半のようなので意外に古い。バスは新幹線をくぐってから急坂を登っていく。住宅街を抜けて新幹線とは反対側の山の中腹に終点湘南日向岡バス停がある。正面が富士山、右に大山が眺められる「絶景バス停」だ。

 ここからさらに坂道を登ったところに平塚市立旭陵中学校があり、電信柱には「海抜73.1m」という標識がある。

 近くの公園から見下ろすと、相模平野から相模湾まで眺められる。ここは三角屋根住宅群のいわば「最上階」。毎日この景色を眺めていたら、人生観も変わるかも知れない。

 聞くところによるとデベロッパーの建設会社が三角屋根住宅を意識的に建設し、また新築の場合も三角屋根を条件にしたという。日本の大動脈東海道新幹線の車窓を意識した面白い試みは、「727」野立て看板とはまた違った存在感を示している。

 また同書には今尾恵介氏による「私の好きな車窓」が挙げられている。東海道新幹線50周年を機に、同書を片手に新幹線の車窓を眺めるためだけの旅、なんてのも楽しめる。

デイリー新潮編集部

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