淑女5人に1人が困っている「カンジダ」の大きな誤解

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 老いも若きも、実に女性の5人に1人が苛(さいな)まれているという「膣カンジダ」。病名に聞き覚えはあるだろう。巷ではしばしば、梅毒や淋病などと一緒くたに「性病」として括られることもあるのだが、それは大きな誤解である。東峯(とうほう)婦人クリニックの松峯寿美名誉院長が言うには、

「カンジダは、口腔内や腸内、頭皮などに存在する常在菌です。相手の男性器にカンジダ菌が存在すれば、性交渉で感染する場合も確かにありますが、基本的には、健康な人では感染症を起こさない病原体によって発症する『日和見感染』の一種です」

 すなわち、いつでも誰でも罹(かか)るおそれがあるというわけだ。

「カンジダ菌の形状には『芽胞(がほう)』と『菌糸』とがあります。通常、体内にいる時は前者の細胞構造をとっており、悪さはしません。ところが居心地がいい環境、とりわけ湿度が高くて栄養が豊富な場所では菌糸に形状が変化し、炎症を起こしやすくなるのです」

 その仕組みは、

「膣内には、有害な菌から身を守る『デーデルライン桿菌(かんきん)』という善玉菌が存在します。この菌は、女性ホルモンであるエストロゲンが作り出す膣上皮細胞を栄養源として繁殖するため、女性ホルモンが減少すればデーデルライン桿菌も減少する。ここで日和見菌であるカンジダが繁殖するスキが生じ、発症に至ります。生理中や妊娠でホルモンバランスが崩れた時に罹りやすいのは、そのためです」

 時には、薬の服用に左右されることもある。

「抗生剤やステロイドを使うことでデーデルライン桿菌は死んでしまいますが、カンジダ菌はしぶとく生きているため、細菌のバランスが崩れて発症することもあります。また性病に罹ると、その原因菌を殺そうとデーデルライン桿菌が働いて減少するため、せっかく治ったと思ったらすぐにカンジダになる、というケースもあるのです」

 松峯名誉院長によれば、発症は幅広い年齢層にわたっているという。

「60代から80代の方も、来院されます。20代や30代とは違って性交渉でうつる症例は少ないのですが、閉経によってエストロゲンは減少しますし、また加齢にともなって免疫力も低下するため、発症しやすくなるわけです」

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