“EXILE一族”・中尾翔太「胃がん」公表で「20代のがんリスク」について考える

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胃がんは完治する可能性も高い?

 秋津医師は「胃がんは罹患者こそ多いですが、死亡者は比例しません。胃がんは手術の技術も非常に発達しました」と指摘する。

 例えば88年に堀江しのぶ(享年23)、93年に逸見政孝(享年48)がスキルス性の胃がんで死去したが、12年には宮迫博之(47)がスキルス性の胃がんと診断され、早期の手術に踏み切っている。また技術の進歩を06年、王貞治(77)の手術で実感した人も少なくないかもしれない。

「王さんは胃の全摘手術を行いましたが、今でもお元気です。胃がんは早く見つかれば、完治する率が高いと言えます。中尾翔太さんのファンはいたずらに心配される必要はないでしょう。そもそも命にかかわるような重篤な状態なら、事務所は『がんです』とは発表しないのではないでしょうか」(同・秋津医師)

 逆に怖いがんとは何だろうか。秋津医師は「医師として怖いのは、膵臓ガンと食道がんです」と言う。共に発見が難しく、ようやく見つけても手遅れということが珍しくない。さらに食道がんは術後の負担が重い。桑田佳祐(62)が10年に受けた手術は成功したが、18代目・中村勘三郎(1955〜2012)は術後の経過が思わしくなく、そのまま死去したのは記憶に新しい。

 20代の胃がんと聞けば「不摂生が原因では」とあらぬ疑いを持つ向きもあるかもしれないが、秋津医師は「事実無根です」と一蹴する。

「少々の無茶をしても、身体は全く問題ないのが20代です。例えば、ホストがお客さんに毎日めちゃくちゃに呑まされたとします。医師からすれば不健康な生活としか言いようがありませんが、20代ならなんとか持ちこたえてしまうのも事実です。同じ生活を50代が過ごせば、たちまち身体を壊すでしょう。中尾翔太さんのケースも全く同じです。生活習慣に起因するものではなく、遺伝的な要因か、よほど不運だったとしか言いようがありません」

胃薬には要注意

 20代だけでなく、50代も90代も気をつけなければいけないのは、非常に効果の高い胃薬「ガスター10」が近年はドラッグストアなどで買えてしまうことだという。

「昔は処方薬でしたから、医師が2週間分を出せば、飲んだ患者さんは2週間後に診察を受けていたわけです。そこで症状が治っていなければ、『胃カメラを飲んでみますか』と次の手が打てました。ところが今は、昔の胃薬とは効果が全く違うガスター10を飲み続け、症状をごまかしながら日常生活を送り、胃がんの発見が遅れてしまうというケースが出てきています。違和感があれば、やはり病院を受診すべきという警鐘ですね」

 20代のがんが、80代のがんより進行が早いのは医学的に見ても事実だという。中尾の胃がん公表に、安易な楽観論は禁物だ。とはいえ早期発見ができたことは、不幸中の幸いかもしれない。

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週刊新潮WEB取材班

2018年3月7日掲載

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