「エモやん」語るスキルス胃がん闘病(下) セカンドオピニオンは聞かない、球界への遺言

野球週刊新潮 2018年2月15日号掲載

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スキルス胃がんにも達観「江本孟紀」闘病手記(下)

 自身のスキルス胃がんについて語る「エモやん」こと江本孟紀(たけのり)さん(70)だが、その口ぶりには達観した様子がうかがえる。胃の全摘手術を受けたのは去年の6月。しかし詳細については「聞いていないんです。だってこと細かに話を聞いたところで、がんが治るわけじゃないですからね」。7月頭に退院し、85キロほどあった体重は67キロまで落ちた。今は75キロまで戻し、予防的に打つ抗がん剤も間もなく終わる予定であるという。

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 体重の変化以外で、手術後に変わったことと言えば、味覚ですかね。抗がん剤の影響なんでしょうが、辛いとか甘いとか、味がはっきりしているものを好むようになりました。僕の一押しはチゲ鍋ですね。全摘して胃がないがん患者は小腸で消化するわけですが、豆腐は消化しやすいし、とにかく辛いのがいい。中途半端な味付けの味噌汁みたいなのが一番気持ち悪いんです。

 あとは、少し冷え症になりましたかね。手足が冷えやすくなった。だから銭湯や温泉に行くようになりました。以前は嫌いだったんですけど、面白いものです。

 他には特に気をつけていることはありません。がんになると、どうしたって「耳年増」になってしまう。ネットでいろいろと調べちゃうんですよ。自分と同じような場合、余命何年だとか、免疫療法はこれがいいとかどうとか。でも、面倒くさくなってね。あれこれ知って考えたって、どうにもならないんですから。だから、セカンドオピニオンも聞いていません。

 まあ、開き直りですよ。打てるもんなら打ってみろと、ピッチャーっていうのは開き直るのが仕事なんです。人生も一緒。どこかである種、開き直らないと。実はね、野手の人ががんになると、結構ウジウジするパターンが多いんです。「痛い、痛い」と言って、皆がかまってくれるのが嬉しいみたいで。やっぱり、がん闘病でもピッチャーと野手の性格の違いが出るみたいですよ。

 そう言えば、膵臓がんで亡くなった星野(仙一)さんとは、昨年11月、彼の野球殿堂入りパーティーで会ったのが最後でした。お互い、球界の風の噂でなんとなくがんであることは知っていて、ふたりとも決して「がん」とは口にしないものの、「俺のほうが先に逝く」なんて言い合っていたんですが、本当に彼はすぐ天国に……。まあ星野さんの突然の亡くなり方も、ピッチャー型でしょう。

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