「エモやん」語るスキルス胃がん闘病(下) セカンドオピニオンは聞かない、球界への遺言

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「エモやん節」健在

 もちろん、僕にも転移のリスクは当然あるだろうし、とりわけスキルス胃がんですからね。でも、助からなかったら助からなかったで、しょうがないでしょ。もう古希なんだから、再発するならするで、それまでの間にどれだけやりたいことをやっておくかが重要だと思うんです。

 昔だったら、儲け話があれば飛びついていたかもしれないけど、僕がくたばったらどうせその話はポシャっちゃう。それよりも、いい景色を見て、旨いものを食って、思い出づくりじゃないけど、そういうことをしておこうかなと考えています。最後は、好きなハーレーダビッドソンでアメリカ大陸を横断したいね。そのためにも、チゲ鍋を食って、もっと体力を回復しておかないといけない。仕事のほうも、そう遠くないうちに目途をつけたいと考えています。野球の世界だけで人生を終えるのも何だか寂しいような気がしてね。

――そうは言うものの、本誌(「週刊新潮」)の取材を受けたのはキャンプ地の宮崎県……。「野球小僧」の虫は、古希にしてもおさまることがない様子で、エモやん流の舌鋒の鋭さは、些(いささ)かも衰えを見せていない。野球の話になると表情が緩み、立て板に水状態。

 今の球界は、(辛口評論で知られた)豊田(泰光)さんだとかがいなくなって、日和見で時代に迎合する人ばかり。だから、大谷(翔平)の二刀流は素晴らしいなんて言ったりする。「何言ってんのお前?」ってなもんですよ。だって二刀流、成功してないじゃない。去年、彼は怪我してかなり試合を休んだわけだから。それなのに世間は大成功と持ち上げる。一方、張本(勲)さんみたいに苦言を呈すると、悪者扱いされてしまう。

 ふざけるなって、言ってやりたいね。断言します。二刀流は明らかに失敗しています。

 まあ今のうちに、いろいろと言っておかないと。ボケたら言えないからさ。冥途に行く置き土産に、ね。

週刊新潮 2018年2月15日号掲載

特集「闘病手記 スキルス胃がんにも達観 5年生存率10% 『江本孟紀』球界への遺言」より

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