小泉今日子、満島ひかり、菅野美穂…女たちの正義のゆくえに決着! ドラマ「監獄のお姫さま」とは何だったのか

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ウーマン・リブ

 日本の司法における有罪率は、起訴された時点で99.9パーセントが有罪になってしまうという一説がある。検察が、有罪になりそうなものばかり選んで起訴しているからだとか、裁判官が無罪判決を出すと出世が遅れるからとか、真相はさだかではないが、司法の世界が相当な魔窟であることは想像にかたくない。5年前の江戸川しのぶ(夏帆)は、かよわいお姫さまでありすぎたために、板橋の策略にかかり、冤罪の憂き目を見てしまった。

 現在の日本で、再審請求が通ることは非常に稀で、年に数件あるかないかだと言われている。そして、実際に最終回で描かれたのはしのぶの再審ではなく、長谷川によって発見された新たな証拠によって板橋に出た逮捕状に基づく、彼の初審であった。そして2018年、板橋の裁判で法廷に証人として呼ばれたしのぶは、立派な存在感を見せつけた。白いブラウスというシンプルな衣装、化粧っ気のない素顔での凛とした佇まいは、しのぶという女性の成長を引き立たせていた。

 このドラマはしのぶひとりの戦いではなく、カヨたちの結託によって成し遂げられたものであり、フィクションであれ、人が正義を貫いて(やり方は少々手荒だったし、元女囚たちが不起訴となったのは幸運と言うほかない)ひとりの女性を救ったことに意義があった。カヨたちが収監されていた刑務所は「自立と再生の女子刑務所」という名前だったではないか。しのぶは見事に「自立」を果たし、カヨたちは復讐を成し遂げ「再生」を果たしたのだ。

 また、前回、芯の強い一面を表した板橋の妻、晴海(乙葉)も引き続きしなやかでタフな女性像を見せてくれた。しのぶの出所の日、彼女の実の息子である勇介(前田虎徹)を連れてきた晴海の覚悟、その様子を見て「いつかわかる時が来る」とつぶやいた勝田千夏(菅野美穂)の言葉に、ドラマが終わっても登場人物たちの未来は続く、という想像と希望を持つことができた。
 
 本作中盤では女性をなじる「おばさん」「ババア」という台詞が連発され、途中で視聴を離脱した人々がいたことは否めない。しかし最終的に、しのぶはEDOミルクという社名を再び江戸川乳業に戻し、社長に就任した。そして日本にまたひとり、女性の社長が誕生したという進歩をもたらしたのである。
 
 脚本を務めた宮藤官九郎が、所属する劇団大人計画で手がける企画公演(1996~)は「ウーマンリブ」シリーズという。その名付けの真意はわからないけれども、私は、本作で1960年代後半にアメリカで起こり、その後世界に広がった女性解放運動「ウーマン・リブ」に通ずる精神を確かに、宮藤なりのやり方で見せてもらえたと感じている。

西野由季子(にしの・ゆきこ)(Twitter:@nishino_yukiko) フリーランサー。東京生まれ。ITエンジニア10年、ライター3年、再びITエンジニアを経て、永遠の流れ者。実は現代演劇に詳しい。

2017年12月28日掲載

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