「国民的美少女コンテスト」グランプリ受賞者はなぜ大成しないのか――人材選抜の謎に迫る

社会2016年2月23日掲載

 あらゆる企業、組織が採用にあたって、慎重に選考を重ね、さまざまな工夫をしています。人材こそが活力の源だからです。

 ところが、あらゆる企業、組織の人たちはこんな不満も抱えているようです。

「あんなに一所懸命選んだわりには……」

 組織論の専門家である太田肇さんは、新著『個人を幸福にしない日本の組織』の中で、芸能界の例を紹介しながら、「厳選された人材は伸びない」と意表を突く指摘をしています。「厳選された人材は伸びる」のではなくて、「伸びない」とは?

 どういうことなのか。同書から引用してご紹介しましょう。

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第二の石原裕次郎

 16年も前なので憶えている人は少ないかもしれないが、石原プロモーションは2000年に“オロナミンC「1億人の心をつかむ男」21世紀の石原裕次郎を探せ!”というセンセーショナルなふれこみの新人発掘オーディションを行った。

 16~25歳男性の応募者5万2000人の中から選ばれたのは当時22歳の徳重聡だ。長身で二枚目の新人スターは、さすがに5万人の中から選ばれただけの輝きを放っていた。

 のちに芸能界デビューし、看板ドラマの主役を務めるなどテレビや映画に出演した。しかし必ずしも大ブレークしたわけではなく、印象も薄かった。

 その後も芸能活動を続けているものの、「第二の石原裕次郎」という看板の大きさからすれば、正直なところ活躍ぶりは物足りない。

美少女コンテストを調査してみた

 ある人にこの話をしたところ、「美少女コンテスト」のグランプリ受賞者だって同じだと教えてくれた。オスカープロモーションが女性タレント発掘のために1987年から開催している「全日本国民的美少女コンテスト」のことだ。

 この世界の消息に疎い私は、学生の手も借りながらさっそく調べてみた。そして、第1回から第13回までの受賞者を一覧表にしたうえで、大学生に教室でタレント名を1人ずつ読み上げながら、彼らがそのタレントを知っている(名前を聞いて顔が思い浮かぶ)か否かを聞いてみた。

 すると、ほぼ全員が知っているタレントと、ほとんどだれも知らないタレントにきれいに分かれた。

 以下、各回のグランプリ受賞者を並べてみる。また、同時期の特別賞なども並べてみる。

 ○がついているのはほぼ全員が「知っている」、△はほぼ半数が「知っている」、無印はほとんどの学生が「知らない」と答えたタレントである。

       グランプリ
 第 1回   藤谷美紀
 第 2回   細川直美
 第 3回   小原光代
 第 4回   小田茜
 第 5回   今村雅美
 第 6回   佐藤藍子      ○米倉涼子(審査員特別賞)
 第 7回   須藤温子      ○上戸彩(審査員特別賞)
 第 8回   渋谷飛鳥、阪田瑞穂
 第 9回   河北麻友子     
 第10回   山内久留実     ○福田沙紀(演技部門賞)
 第11回   林丹丹       △忽那汐里(審査員特別賞)
                 ○武井咲(モデル部門賞・マルチメディア賞)
 第12回   工藤綾乃
 第13回   小澤奈々花、吉本実憂

 学生の年齢が20歳前後と若いこともあってか、第5回までの受賞者はまったくといってよいほど知られていない。そして驚くべきことに、ほぼ全員が歴代のグランプリ受賞者を知らなかった。知っていたのは特別賞や部門賞の受賞者ばかりである。

 ただ、もしかしたら授業を受けていた学生だけの特殊な傾向かもしれない。そこで念のためグーグルで1人ずつ名前を検索して、どれだけの件数がヒットするかを試してみた。

 その結果、学生の回答と同じような結果が出た。知名度でみるかぎり、グランプリ受賞者の完敗である。

 ちなみに、おそらくたいていの人が知っていると思われる剛力彩芽も第8回で予選落ちしている。

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 なぜこのようなことが起きるのか。「選んでもハズれる」どころか「選んだらハズれる」とも言えるべき現象について、太田さんは、いくつかの可能性を述べている。

 (1)多くの人の目で、あらゆる角度から選ぶので、角がとれた人が選ばれがち

 (2)選者が無意識に過去の経験に照らして選ぶので、新奇性、意外性を捨ててしまう

 こうした分析を踏まえたうえで、太田さんは、企業が人を選ぶ際にも同じ轍を踏む危険性があることを指摘している。つまり、従来型の選考方法では「化ける」人材を取りこぼしてしまうかもしれない、というのだ。

 従来とはまったく異なるアイディア、価値観が求められるビジネスシーンにおいて、これは致命的なことかもしれない。『個人を幸福にしない日本の組織』は、従来の組織論の「常識」を覆す一冊である。

デイリー新潮編集部