女たちからメッタ斬り?! 悪役・伊勢谷友介の深みに触れる「監獄のお姫さま」第4話
罪と罪のぶつかり合い
そんなカヨの奮闘の甲斐あって(?)、しのぶの妊娠を知ることになった相部屋の女囚たちは一丸となり、「姫」たるしのぶを応援する。その姿は感動的であり、なぜ彼女たちが強い絆で結ばれて、のちに板橋に復讐を企てることになったか納得させる力強さがあった。
しかし、今回は女囚たちではなく、彼女らに誘拐されたEDOミルクの板橋社長こと、伊勢谷友介にもフォーカスを当ててみたい。女囚たちの過去を描く場面で、彼はいわば象徴的な宿敵たる「男」としてすべての回想シーンに登場した。カヨが刺した夫として、極道の妻だった明美(森下愛子)の舎弟として、千夏(菅野美穂)のろくでもない父として。
不惑を迎えた伊勢谷の貫禄、インテリジェンス漂う佇まい、彫りの深い顔ににじむ不穏なワルさはしたたかさを感じさせるが、女囚たちの罪の奥底にある原風景に登場した伊勢谷は、温かみも哀愁もダサさも併せ持っていて、どこか憎めない。
女囚たちは、それぞれ仇である男にどこか板橋を重ねて見ている。だがこれを、単純な「女性VS男性」という構図に落とし込むべきではないと、今回の放送を観て考えさせられた。本作は、女たちが男に罰を与える勧善懲悪の物語ではないのだ。前科者の女たちと、恋人に罪をかぶせた男。いわば罪と罪のぶつかり合いだ。そういえば第1話でふたば(満島ひかり)が言っていた。「図々しいんですよ、犯罪者って。刑務所のことタイムマシンか何かだと思ってるんです。出てきたら犯した罪がチャラになると思ってるんです」と。そのとおりだ、チャラになんてなるわけないじゃないか。
女囚たちは板橋を誘拐したことで、ふたたび罪を犯した。そして板橋にもきっと、どんな手を使ってでも社長に成り上がりたかった理由があるはずなのだ。登場人物全員の罪深さを、業の深さを、まだまだ魅せてもらいたい。
昨今は芸能人の不倫、政治家の不実、著名人のツイートなどを標的に、誰でもインターネットを武器にして、見知らぬ他人に罰を与えたがる世の中である。カヨはスマホが苦手、という設定はそうした時代へのアンチテーゼにも思える。「監獄のお姫さま」は、市民によるネット私刑が蔓延する世界に、宮藤官九郎が打ち出す渾身の「罪まみれ」エンターテイメントだ。いわば罪でしか罪を罰することができない、そんな物語である。登場人物たちが罪に手を染め抜いてたどり着く先を、楽しみに待とうではないか。
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