「アタマのいい鴨のほうがうまい!」って本当? 食通も激賞する、一度は食べたい鍋

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 日が短くなりそろそろ木枯らしが吹きはじめると、ガゼン身体が温かいモノを欲しはじめる。こんな季節に食べたくなるものといえば、もちろん「鍋」! 

 今回ご紹介するのは、「おいしいもの」のためならば万難を排し地の果てまでもゆく情熱に溢れた食エッセイの名手、平松洋子さんが激賞する鴨鍋だ。

 繊細な舌とタフな胃を備え、いかなるものも味わい尽くさずにおかない当代きっての食通をして「人生を変えるほどのおいしさ」と言わしめたのは、石川県加賀市の伝統の一品「鴨 治部鍋」。

 日本全国の“すごい味”を探訪した食エッセイ『日本のすごい味 おいしさは進化する』のなかで平松さんは「鴨 治部鍋」を食した感想をこう綴っている。

「ゆらり。だしの表面に鴨肉が舞い上がってきた。その瞬間を逃さず箸ですくい上げ、わさびをつけて口に運ぶ。・・・さっくりと肉質は軽やか。肩すかしを食らったと油断した直後、凄まじいうまみがどっと襲来した。たまらず、さらに噛む。みるみる口中が鴨のこくに充たされ、歯茎をじいんと撃つ。・・・純粋な野生の味とはこのこと」(「鴨治部鍋」より)

 加賀・大聖寺に300年つづく秘技「坂網猟」にも同行した平松さんは、はるばる北極圏からこの地の湿地帯めがけて飛来するマガモと、ゆうに半世紀を超える駆け引きを演じてきた老練の猟師・池田豊隆さんから聞いた一言に衝撃を受けたという。

「アタマのいい鴨はうまい。たるーい奴はやっぱりうもうないんや。肉は噛めば噛むほど香ばしい。こくが違う。マガモは鳥類のなかでトップやと思う」

 鴨でさえアタマ悪いとマズいのか……と、なぜだか少し凹むが、「食べてみたい! アタマのいい鴨!」と思った方は、加賀市内の「ばん亭」を訪ねてみてほしい。ここでは、たぎった出汁を張った鍋に鴨ロースを投入する前に小麦粉、片栗粉をうすくまぶしつける加賀の郷土料理「治部鍋」の手法をとっており、肉のうまみを逃がさず柔らかく味わえる。

『日本のすごい味 おいしさは進化する』巻末お取り寄せ情報によれば、マガモの猟期は11月15日に始まり、お取り寄せも可能だとのこと。

 鴨鍋にいざなわれて旅に出るもよし、自宅で日本のすごい味を追体験するもまたよし。食欲の秋、食通をも唸らせる鴨鍋に舌鼓を打ってはいかがだろうか?

デイリー新潮編集部

2017年10月7日掲載

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