「ふるさと納税」が待機児童を増やす 世田谷区の税収減が危ない

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減収額は保育所109カ所分

 ふるさと納税が増えれば、当然のように、税収が減少する自治体も発生する。その煽りを受けたのは、世田谷区だけではない。特に深刻なのは都市部の住民税流出だ。

 再び、保坂世田谷区長。

「減収額だけ見れば、平成28年度の上位は横浜市(約32億円)、名古屋市(約19億円)、大阪市(約17億円)で、世田谷区は第4位になります。しかし、上位3市は地方交付税によって税収減の4分の3が補填されます。ところが、東京23区は地方交付税の交付対象ではない特別区なので、税収減がそのまま予算を直撃します。つまり、世田谷区は実質的に、日本で最もふるさと納税による財政難に直面している自治体ということになるのです」

 今年3月13日、税収減に危機感を持った特別区長会は、総務省にふるさと納税の是正を求める要望書を提出した。特別区(東京23区)としては、ふるさと納税の本来の趣旨には賛同するものの、税収減の高額化を看過できなくなったのだ。

 平成28年度のふるさと納税による特別区民税の減収額は、前年度の約5・4倍に当たる129億円。これは、区立保育園(100人規模)109カ所分の年間運営費に相当する。待機児童対策に必死に取り組んでいる特別区にとっては、大きな痛手となる。さらに、平成29年度の見込み額は、約2倍の207億円と算出されている。

「新潮45」8月号では、さらにこの問題を詳報している。

新潮45 2017年8月号掲載

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