元リーダー逮捕!「怒羅権」とはどういう組織なのか

社会2017年7月26日掲載

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 中国残留孤児2世らで作る不良グループ「怒羅権(ドラゴン)」の元リーダーの男が、拳銃2丁などを隠し持っていたとして警視庁に逮捕された、とTBSが24日、報じた。

 この「怒羅権」(または「チャイニーズドラゴン」)は、警視庁の組織犯罪対策部(通称・組対=ソタイ)の2課が最重要の捜査対象として監視、実態把握を行っている暴走族グループである。

 組対の仕事や組織を解説した新書『マル暴捜査』(今井良・著)から、このグループの歴史と現在を見てみよう(以下、『マル暴捜査』より抜粋・引用)

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日本人への怒り

「怒羅権」は、中国残留孤児2世、3世を中心にして1988年に結成された暴走族グループで、当時中国からの帰国者が入居していた「常盤寮」があった東京・江戸川区が誕生の地とされている。捜査関係者が説明する。

「ドラゴン、龍は一般に中国のことを指す。しかし彼らの『怒羅権』には別の意味もある。『怒』は、日本人からのいじめに対する『怒り』から、『羅』は、強敵を倒す『羅漢』から、『権』は、自分たちの『権利』を守るという意味から取られている」

 彼らの凶暴化はある事件がきっかけだったと、この捜査関係者は続ける。

「メンバーらは都内の残留孤児2世を受け入れる限られた高校に通っていた。日本語が不自由だった彼らの中にはここで日本人から凄絶ないじめを受ける者もいたんだ。1989年には残留孤児2世の女子高校生が日本の暴走族グループに乱暴される事件が起こった。報復が怒羅権と日本の暴走族との本格的な抗争に発展した」

 木刀やナイフ、青龍刀などで武装した怒羅権は、最終的には対立する日本の暴走族を傘下に置いてしまう。そこから更に凶暴性を増していったという。

「最盛期は300人以上のメンバーが集まった。凶暴化した彼らの行き着いた先はれっきとした犯罪集団だ」(捜査関係者)

影のリーダーとの攻防

 凶暴化した怒羅権メンバーは強盗や麻薬の取引などに乗り出すようになる。

「怒羅権の組織内では吉林、遼寧、黒竜江省の中国東北部の出身者が力を増していくようになった。このころ残留孤児2世、3世の集団から黒社会とよばれる本格的な中国マフィアに変貌した。そして大偉(ターウェイ)という男を統括役に頂いていくつかのグループに枝分かれしていった」(同)

 大偉は1966年、中国・黒竜江省生まれ。怒羅権の影のボスとされ、メンバーを統率していたほか、1990年代半ばに台頭していた日中混成強盗団のリーダーとされている(注・今回逮捕された元リーダーとは別人)。

 警察関係者によると、父親は中国共産党の元幹部で母親は終戦時に満州に取り残された日本人だという。少年時代に周囲の中国人からも猛烈ないじめを受け続けて来たという。しかし、大偉は持ち前の気力でいじめにも耐え、逆に相手を叩きのめすなどこの頃から「理不尽には暴力で対抗」することを実践していく。

 17歳で人民解放軍に入った後、20歳で母親と親族らと来日。23歳ごろには友人らと貿易会社を起こすなど、商才、リーダーシップを遺憾なく発揮して、日本の中国人社会の中で頭角を現していったという。

「大偉は新宿歌舞伎町でおよそ100人のメンバーを従え風俗店などの経営に乗り出した。さらにパチンコの裏ロム販売、窃盗品の販売など非合法な商売も手掛けた。そして勢力は葛西、錦糸町、上野にも及んでいった。傘下のグループから上納金を受け取っていたが、指示の出し方が巧みだから尻尾をつかませない。頭が切れる印象だった」(元警視庁幹部)

 大偉は怒羅権の各種犯罪の指示、関与をしていたとみられたものの、長きにわたって警察当局に検挙されることはなかった。ようやく警察が彼の身柄を取ることが出来たのは2005年2月だった。

容疑は覚醒剤の所持と使用。

大偉は有罪判決を受け服役。数年後に満期出所したが、警視庁は出所後の動向を徹底的に監視していたようだ。しかし、同じ轍は踏まないと判断したのか、再度、逮捕されることを怖れた大偉は母国に帰ってしまう。捜査関係者によると、中国の国内を転々と移動した後、現在は北京市内にいるとみられるという。

 捜査関係者によると怒羅権はその後、ナンバー2とされる男を実質的リーダーとするグループを中心に、別の中国マフィアや日本の暴力団、それに関東連合OBとも一部連携しているという。

準暴力団に認定

 組対2課は大偉が帰国した後も、次々と他のグループの幹部らを摘発し、弱体化を狙っていった。しかし、そうした警察の徹底した取り締まりに怒羅権も対抗している。捜査関係者によると今なお都内や近郊には7つのグループが存在し、約300人のメンバーがいるとされている。

「2011年には怒羅権をチャイニーズドラゴンとカタカナ表記で呼ぶように警察庁から通達が来た。怒羅権は暴走族集団の名称だったが、それぞれのグループの活動が暴走族だけにとどまらないものになってきていたのは確かだった。カタカナ表記にしたのは怒羅権のすべてのグループを総合的犯罪集団と位置づける意味合いを強くしたということなんだろう」(捜査関係者)

 名称を変えただけではない。警察庁は2013年、暴走族グループの関東連合とともに、チャイニーズドラゴンを「準暴力団」と認定。徹底して取り締まっていく方針を定めたのである。

 準暴力団に認定したことで警察当局、特に組対2課は更に取り締まりを強化する方針だ。しかし、ある捜査関係者は深刻な表情で言う。

「準暴力団に認定されたことで、チャイニーズドラゴンはこれまでのように動き回ることはできなくなった。しかしそれは同時にアングラ化を促してしまう。より見えにくい犯罪にシフトしていっているんだ」

 捜査関係者によると、「危険ドラッグ製造販売」と「拳銃密売」の分野で、彼らと暴力団など犯罪組織同士のタイアップ犯罪が深刻化しているのだという。

「危険ドラッグへの包囲網は整いつつあるが、いたちごっこは続いている。製造には中国の怪しげな化学メーカーが絡んでいる。今出回っている危険ドラッグのほとんどは中国産。日本の暴力団とも流通ルートなどで上手く協力し合っている。拳銃も然りで、中国製の改造拳銃がヒットマンとセットで取引されているくらいだ。そうした中国と日本の犯罪の橋渡し役となっているのがいまのチャイニーズドラゴンなんだ」

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 国際化、多様化する犯罪組織と闘うために、組対側も本来の課を超えた捜査班を編成するなど、柔軟な体制で捜査に臨んでいるという。今回の逮捕もその成果だろうか。

デイリー新潮編集部