放し飼いレトリバーが乳児を…犬好き一家の悲劇 

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“加害者”は…

「これほどやりきれない事件は珍しいと思いますよ」

 と全国紙の社会部記者が言うこの「噛み殺し」事件。発生は3月9日の夕刻のことだった。

 犠牲となったのは安田翠(みどり)ちゃん。祖父母宅から車で20分ほど、同じ市内のアパートに母親と暮す10カ月の女児だ。木曜日の朝、いつも通り保育園に預けられた翠ちゃんは、程なく発熱。仕事中の母親は、引き取りを父母(翠ちゃんの祖父母)に頼んだのである。

 記者が続ける。

「お母さんはシングルマザーで、普段から祖父母に引き取りを頼んでいたそうです。その日も祖父母は孫娘を連れて帰り、家の1階リビングで遊ばせていた。この家は、小型犬2匹と秋田犬、そして、大型犬のゴールデンレトリバーの計4匹を飼っていました。部屋の中にはケージがあるものの、レトリバーは放し飼いにしていたそうです……」

 16時半。一瞬の出来事だった。リビングをハイハイして進む翠ちゃん。そこに横からレトリバーがいきなり入り込み、翠ちゃんの頭にガブッと噛み付いたのだ。

「慌てておばあちゃんが“ダメよ!”と言うと、犬はすぐに翠ちゃんを離したそうです。しかし噛まれた場所が場所で出血も見られた。すぐに祖父が119番通報し、翠ちゃんは近くの病院に搬送されました」

 レトリバーは4歳のオス。人間にして30歳前後といったところだろうか。体重は40キロ弱。体高は50〜60センチ。一方の翠ちゃんは平均的な発育であれば、体重8キロ、身長は70センチといったところであろう。自分より5倍も重い獣に噛み付かれた翠ちゃんの危機は明らかだった。

「搬送された時はまだ息はありましたが、2時間後に病院で息を引き取った。死因は出血多量か外傷性ショックと見られています」

 祖父母にとって、翠ちゃんは大切な孫だったという。10カ月と言えば、ハイハイもだいぶ速くなり、つかまり立ちも始まる時期。日々はっきりと見える成長が嬉しくないはずはなかろうが、それが一瞬にして断ち切られたばかりか、自らは警察の捜査対象の身となってしまったのである。

「所轄の南大沢署が捜査を開始。過失致死、あるいは、重過失致死での立件を視野に入れていると思われます。取り調べに祖父は“むしろ臆病な犬だった”“吠えたり噛んだりもしなかった”と述べています。一方、“加害者”のレトリバーは南大沢署に預けられ、処置を待つ身となっています」

 被害者感情を考えれば、「殺処分」もあり得ると、さる専門家は言う。

特集「なぜ大事な乳児を噛み殺したのか?800万『愛犬家世帯』が慄然!
従順な『レトリバー』が狂暴化する『5つの引き金』」より

週刊新潮 2017年3月23日号掲載

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