追悼・松方弘樹 特集上映で観る役者人生の変遷

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黙って観にこんかい!

 突然の訃報から2カ月。“あの男”がスクリーンに帰ってくる。

 俳優の故・松方弘樹を追悼する映画特集である(3月19日〜31日、池袋・新文芸坐)。

 映画ライターの話。

「劇場で観られることはめったにない初期のものや、晩年までの作品の中から選ばれた26本が一堂に会します。ソフト化されていないものも含まれているので、ファンにはたまらない企画です」

 これまで松方作品を数多く手がけ、プライベートでも親交の深かった脚本家の高田宏治氏(82)が言う。

「今回の特集はほぼ公開順に上映されるので、初日から順に観ていくと、彼の役者人生の変遷が掴めるのが大きな特徴ですね」

 松方の映画デビューは1960(昭和35)年。

「例えば同じやくざ映画でも、84年公開の『修羅の群れ』のように親分の役で主演しているものと、脇役として出ている73年から始まった『仁義なき戦い』シリーズとでは、演技が違うんですよね。主演物だと二枚目でたしかにかっこいいんですが、かっこつけすぎちゃって、そこで終わってしまう。ところが、『仁義なき〜』シリーズでは、金子信雄や宍戸錠など、他の役者に泥臭くぶつかっていく中で、演技を工夫し、ものすごい迫力を生むんです。そうした違いがよくわかると思います」

 血しぶき飛ぶ映画ばかりではない。

「手前味噌ですが、私が脚本を担当した『藏』をぜひ観ていただきたい。あの松方が、目の不自由な娘を持つ父親を演じているんですよ。やくざ映画の衰退以降、彼は次の当たり役を模索していろんな役にチャレンジしていましたが、どれも器用にこなすものの、正直、ハマるものはなかった。そんな中、『藏』では、本当に繊細な演技をしていて……。テレビドラマでも、マイホームパパの役なんか、もっとできたんじゃないかな」

“あの世界”だけではない松方ワールドをご堪能あれ。

週刊新潮 2017年3月23日号掲載

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