明治「R-1ヨーグルト」ステマ問題、タカトシも“毎日飲んでます” 在京キー局の疑惑番組を列挙

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 TBS系列のローカル局「IBC岩手放送」が放送した昨年9月の番組で、明治「R-1ヨーグルト」のステルスマーケティングが行われていた問題。

 番組審議会の議事録にある編成局長、番組プロデューサーの「自白」で明らかになったのは、番組内でR-1の情報が盛り込まれることを条件に、明治がこの番組に「料金」を出し、かつ番組内で流れる「提供」社の中にも明治の名を入れない「ノンクレジットタイアップ方式」なる「ステマ」の方法である。

「ステマ」と言えば思い出すのは、4年前のタレント・ほしのあきの「ペニオク騒動」。対価を得て、詐欺オークションサイトの宣伝記事をブログに記し、活動停止を余儀なくされた。また、2005年、「週刊朝日」が「武富士」から5000万円もらい、広告とわからない形式でパブ記事を掲載。この責任を問われて、朝日新聞の箱島信一社長が退任したこともあった。

 2つのケースはいずれも問題業者の宣伝を行ったことで批難を浴びた。その意味で今回の件とは異なる。

 だが、ネットや出版界では記事と広告の線引きを定める法規制がゆるいのに対し、テレビの場合は、

「放送法12条では、広告の意図をもって特定の商品の有効性を訴える場合、視聴者の方にそれを明らかにわかるようにしなければいけないと定められています」(総務省地上放送課)

 IBCがその一線を踏み越えたことは間違いない。

■“疑惑”一覧

 では、これは経営基盤の弱いローカル局のみのことなのか。

 明治はもちろん営利企業。東北より、関東圏ははるかにマーケットが大きい。IBCで行ったことを、明治が在京キー局で試みない道理はない、と考えるのが、普通の感覚だ。在京キー局の番組で同様に宣伝臭漂うものはないのか――と調べてみれば、やはりあった。

 やや冗長になるが、IBCの番組以後の“疑惑”のものを列挙すると、

①「30XX年まで生き残れ 衝撃!世界の(秘)健康法SP」(TBS15/10/24)

②「あなたの体の悩みを2週間でスッキリ!!」(テレビ朝日15/12/13)

③「ソレダメ!~新常識満載!食生活改善SP~」(テレビ東京16/1/6)

④「駆け込みドクター!」(TBS16/1/10)

⑤「ヒデ&ジュニアのニッポン超安全サミット」(フジテレビ16/1/22)

⑥「FOOT×BRAIN」(テレビ東京16/1/23)

⑦「つなげリオへ!噂にアタックNo.1」(フジテレビ16/5/14)

⑧「直撃!コロシアム!!ズバッと!TV」(TBS16/7/4)

⑨「プロから学ぶ生活術 ダメだし!アドバイザー」(テレビ朝日16/9/25)

 と日本テレビを除く全キー局に及ぶ。これらの番組ではいずれも一部でIBCと同じく、R-1乳酸菌は、免疫力をアップさせ、風邪あるいはインフルエンザ予防の効果を持つもの、との説明がなされている。また、やはり番組中「明治」の名はまったく出てこない。

■「極めてPR色が強い」

 ところが、だ

「程度の差こそあれ、これらの番組において明治がかなりの“関与”をしているのは間違いないと思います」

 と言うのは、これらの9番組のVTRをすべて見た、フリーディレクターで『テレビ局の裏側』の著者・中川勇樹氏。

「まずIBCと内容が非常に似通っている。とりわけ岩手で使用されたデータが数多く使用されていることが挙げられます」

 明治は佐賀県有田町などでお年寄りや子どもに一定期間、R-1ヨーグルトを飲んでもらい、免疫力が上がった、風邪やインフルエンザの罹患率が下がったなどの調査結果を公表している。確かに、ほとんどでこのデータが用いられていた。そのうちいくつかはグラフのデザインまでIBCのものと一緒。すなわち、IBC同様、明治から提供されたものを、そのまま番組で使用している可能性が高い。そして、うち2つでは、IBCの番組でも登場し、「明治から寄付を受けて大学に講座を開設している。言わば、“利害関係者”」(経済誌記者)の順天堂大学免疫学講座の奥村康・特任教授が解説を行っている。

 また、IBCの番組に見られたように、

「番組の構成上、流れから明らかに不自然な形でR-1乳酸菌の説明が入れられているものがある。これらは極めてPR色が強い」

 と述べるのは、同じく9番組をすべて見た上智大新聞学科の水島宏明教授(元日本テレビ解説委員)だ。

 とりわけ①の「衝撃!世界の(秘)健康法」。このどこに、「日本の普通の健康法」であるヨーグルト摂取が取り上げられる余地があるのか、甚だ疑問である。

■トシも“毎日飲んでます”

 加えて、番組制作上、不自然な点も垣間見える。

 中川氏によれば、

「番組中の『R-1乳酸菌』テロップの色使いが、ヨーグルトのパッケージの色と一緒。商品を連想させるためという意図を感じます」

 多くの番組において、説明のために「R-1乳酸菌」のテロップが多数使用されているが、そのほとんどの色が赤。すなわち、明治「R-1ヨーグルト」のパッケージと同じ色だ。

 R-1のみならず、PA-3乳酸菌、LG21乳酸菌についても取り上げられているのが③の「ソレダメ」。しかし、これらはR-1同様、明治のみがヨーグルトとして商品化しているもの。しかもテロップの色が赤、黄色、青とそれぞれ明治の商品パッケージと完全に一致しているが、これなどとても偶然とは思えない。

 また、

「出演者が不自然にR-1ヨーグルトを“持ち上げる”コメントをしている点も気になります」(水島教授)

 ②の「体の悩みを2週間でスッキリ」では、番組中、ゲストが免疫力チェックを受ける。そこで「1位」と測定されたのは、タレントの遼河はるひだが、その彼女がR-1の効能の説明の後、「私、本当に1年前からR-1を毎日飲んでいるんです」と発言。

 やはり効能の説明の後、司会のタカアンドトシのトシが「私も毎朝飲んでいます」「風邪をひかなくなった」「免疫力上がっているんじゃないですかね」とコメントをしているのは⑨の「ダメだし!アドバイザー」である。

 さらには、アスリートがR-1と関わるパターンも。

 サッカー番組の⑥「FOOT×BRAIN」は、番組中で、FC東京の選手がR-1を飲んで免疫力が上がったとの話題が出てくる。

 ⑦の「つなげリオへ」は、バレー日本代表の応援番組。うち宮下遥選手がR-1を毎日飲み、コンディションを整えているという話も紹介されるが、実は、明治は、FC東京と女子バレー日本代表のオフィシャルスポンサー。

 例えば、錦織圭がユニクロのシャツをテレビで褒め称えていたら、誰もがその“広告臭さ”に気付くはず。同じ構図の話をキー局が堂々と「番組」として流しているのだから、やはりウラに明治の意図を感じざるを得ないのである。

特集「完オチの議事録入手!明治『R-1ヨーグルト』とテレビ局の裏金『ステマ番組』」より

週刊新潮 2016年12月22日号掲載

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