小池百合子都知事、森喜朗元総理に3連敗? 競技会場見直しバトル

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「劇場型の政治家」といえば、今や小泉純一郎でも橋下徹でもなく、小池百合子都知事(64)のことを指すらしい。しかし、東京五輪の競技会場見直し問題では、森喜朗元総理(79)とバトルを繰り広げたものの、あっさり完敗。早くも期待外れという声が上がって……。

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犬猿の仲

 小池知事と森元総理は、今や誰もが知る“犬猿の仲”である。二人も公の場でそれを隠そうとしないので、収拾がつきそうにもない。

 今回の3競技場の見直し問題を巡っては、傍から見れば、都知事対15年前の元総理で五輪組織委員会委員長の勝負なら、都知事に軍配が上がりそうだ。しかし、双方が火花を散らした結果を見てみると、小池都知事の3連敗という声が聞こえて来るのだ。

 IOC(国際オリンピック委員会)、東京都、組織委員会(大会組織委員会)、政府の4者協議が行われたのは11月29日である。3競技会場のうち、ボート・カヌー会場の海の森水上競技場、競泳会場のアクアティクスセンターは、費用を見直した上で予定通り建設すると決定。バレーボール会場は、小池知事の希望で結論を12月下旬まで先送りにした。都政担当記者によれば、

「当初、都の調査チームは、既存の施設を利用することを目玉にしていた。具体的には、ボート・カヌー会場は宮城県長沼ボート場、競泳・飛込・シンクロは東京辰巳国際水泳場、バレーは横浜アリーナを改修して使用すると。が、ボート、水泳は×。バレーについては、受け入れ先の横浜市が難色を示す文書を提出しており、実現は厳しい情勢です。既存の施設に移転させるという点では、まさかの3連敗になりそうです」

 12月2日の会見では、記者が「大山鳴動して鼠一匹ではないか」と質問した。すると、小池知事は「失礼なんじゃないですか」「大きな黒い頭の鼠が一杯いることが分かったじゃないですか」と色をなして反論したのであった。

「黒い頭の鼠」とは、他人の物などをかすめ取る人をたとえて言う言葉だ。「もしや、森さんのこと」と思った人もいたはずである。

■「悪玉に仕立てた」

 実際、小池知事は周囲に、

「IOCは、組織委員会から“現状通りやってほしい”と言われて困っているのよ」

 こう愚痴っている。都庁関係者が解説する。

「小池さんは、3会場の見直しについて、森さんがIOCと事前に話を付けたと見ています。彼女は日頃から“諸悪の根源”と呼ぶほど、元総理を蛇蝎(だかつ)の如く嫌っていますからね。今度の問題でもご立腹なんです」

 そもそも、小池知事と森氏は、なぜ対立しているのか。解説するのは、組織委員会の幹部である。

「小池さんは都知事選の時、コンパクトに作っていたものを組織委員会が拡大したと言っていた。総費用が7340億円から2兆円に膨れ上がったとね。しかし、実際は、晴海の選手村から8キロ圏内に85%の施設を造ると逆に高く付く。そこで、森さんは一部の競技を地方に持って行き、新規建設費用を2200億円削減した。なのに『小池が俺を総費用を3倍にした悪玉に仕立てた』『俺を悪役にするけど、これは小泉純(一郎)ちゃんがやった手法だ』とボヤいていました」

■難しい横浜への移転

 こうして始まった権力闘争の結果は、森氏の圧勝だった。幹部氏が続ける。

「まず辰巳国際水泳場を増築する案は早々に消えた。残る2競技会場のうち、彼女がご執心だったのは、復興五輪にかこつけたボート会場の長沼移転でした。長沼は東京から新幹線と車を使っても2時間半かかり、選手村から遠すぎることは言うまでもない。もっとも、それ以上に森さんからすれば、ボートやヨットはヨーロッパでも貴族階級、セレブのスポーツ。彼らは東京で五輪が行われるのを楽しみにしていて、プライドも高い。今更、宮城でやるのは無理だと主張していました」

 森氏曰く、“長沼にはラブホテルが3軒くらいあるだけ”だそうで、

「選手、役員、観客を合わせれば、1万もの人が来るかもしれない。宿泊施設は足りない。報道関係者のために光ファイバーなどの通信網も敷かねばならない。何百億円という経費が掛かる。そういう計算も全くされていないというのです。森の主張の方が正しいように聞こえますよね」(同)

 で、結局、10月中旬に来日したIOCのバッハ会長から「ルールを変えるのは良くない」とNGを出される。彼女は長沼案が形勢不利と見ると、今度はバレーの横浜アリーナでの開催に軸足を置き始めたが、

「横浜への移転も極めて難しいと見られています」

 と、スポーツ紙のデスクが改めて解説する。

「五輪のバレーボール競技場の条件は、試合を行うコートの他に、2チームがウォーミングアップを行うためのサブコートが2つ必要です。しかし、横浜アリーナには1つしか設置できない。五輪調査チームは、隣接する空き地にもう1つサブコートを作れば対応できるという。しかし、そうなるとメインコートまでの距離や環境といった条件が2チームで異なり、競技団体も反対しています」

 横浜市は競技団体の意向を重視するそうだから、横浜アリーナ案は風前の灯……3連敗の気配が濃厚というわけである。

特集「『長沼ボート場』『横浜バレーボール』『競泳会場』まさかの3連敗!? 首魁『森喜朗』に勝てない『小池百合子』貧弱ブレーン」より

週刊新潮 2016年12月15日号掲載

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