坂上忍が“パシリ”に! 大スターの無茶ブリに感謝

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坂上忍さん

 小池百合子都知事がボート・カヌー会場をめぐって宮城県知事と事前に協議してたとして物議を醸している。しかし、責任を取れるトップ同士が話をすれば、話が早いのも事実。

 俳優の坂上忍さんは、新著『スジ論』の中で、大スターから直接オファーを受けたエピソードを披露している。諸先輩との思い出を振り返った第4章「惚れた背中を勝手に追い続ける」の中から、小林旭さんからの「直接交渉」について綴ったところを抜粋して、引用してみよう。

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■「小林旭だけど、すぐに電話くれるか」

 先日、携帯電話に留守録のマークが出ていたので、聞いてみると……。

「小林旭だけど、すぐに電話くれるか」。

 そりゃあ、慌ててかけますよね。すると……。

「お前、子役スクールやってんだろ。今、舞台の稽古中なんだけどな、いい子役がいないんだよ。だから明日の昼までに6歳ぐらいで芝居のできる子、数人見繕ってくれ」。

 え~っとね。有難いですよ。要はお仕事の依頼なわけですから、そりゃあ嬉しいですよ。でもね、明日の昼まではないでしょ。いくらなんでも急過ぎるでしょ。

 とはいえ、断れるはずがないですから。お世話になった大先輩からの依頼? いや、命令ですからね。慌てて事務所スタッフと連絡を取り、なんとか数人の子役さんを確保し、翌日、稽古場に向かってもらった次第。

■やってはいけないやり方だとしても

 でもね、なんか嬉しかったんですよ。久しぶりに無茶苦茶な要求をされたな~ってね。このご時世、なかなか無茶苦茶できないじゃないですか。仕事はもちろん、遊びもね。なにからなにまで段取りを踏まなきゃならなくなってしまったといいますか。

 例えば今回のケースなら、制作スタッフとマネージャーとのやりとりがあって、条件が折り合った上で正式オファー。これが正しい流れだとするならば、旭さんのやり方は中間のやりとりを一切合財取っ払ってるわけですから。

 舞台の総責任者である旭さんが、子役スクールの責任者であるわたしに直接電話をし、「なんとかなんねぇか」と。もしかしたら、やってはいけないやり方なのかもしれない。けどね、話は無茶苦茶早いですよ。

 だって責任者同士なんだから。しかも、責任を取れる、取る覚悟のある者同士のやりとりなわけで。とかく間に人が入ってしまうと、駆け引きだなんだと遅々として話が進まない場合が多い。まぁ、それが普通というか、ある意味そうじゃなきゃいけないんだけど、急を要する時は別じゃないですか。

■パシリになれたことに感謝

 だってヤバいんだから。ヤバい時になにが必要かっていったら、もちろん人脈があったら言うことないんだけど、最大の武器は「熱」でしょ。

 数少ない本物の映画スターである小林旭さんが、自ら携帯電話を手にする。留守番電話を聞くと、旭さんが不慣れな敬語もどきで話してる。慌ててわたしがコールバックする。わたしの声を聞いて安心したのか、普段の旭節に戻る。けど、旭さんの「なんとかなんねぇか」のひと言には、この舞台を少しでもクオリティの高いものにして、お客様に届けたいんだ! という熱い想いが籠められている。

 だったら、断る理由なんてひとつもありませんし、なにがなんでも力になりたいですし、逆に間に人を挟まなかったことに感謝と言いますか、旭さんと直接やりとりができたおかげで、久しぶりにパシリになれたような気がしてね。

 若い頃は事務所任せでいいんです。でも、いい歳こいたら、事務所も大事ですけど、所詮、我々は個人事業主なわけで。それ以前に、ひとりの人間でありたい。

 だったら、たまには杓子定規な段取りとやらを飛び越えて、恩義のみで仕事をすることがあったっていいじゃないの!

 ***

 ちなみに、坂上さんが小林旭さんと初めて一緒に仕事をしたのはヤクザ映画。そこでかけられた初めての言葉は「お前の歩き方はヤクザもんじゃねぇな」。そのひと言をいまでも胸に、俳優を続けているという。

デイリー新潮編集部

2016年10月25日掲載

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