退位で陛下の「呼び名」、お住いと予算はどうなる?〈生前退位の大疑問〉

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 ところどころ、目が粗いザルのようなものだ。なにしろ、今上陛下に相応しい尊号を皇室典範は定めていないのだから。昭和天皇が崩御され、香淳皇后は「皇太后」として余生を過ごされた。生前譲位でも美智子さまは前例を踏襲できるが、天皇陛下はそうもいかない。院政を思わせる「上皇」では時代にそぐわぬという声もある。所功・京都産業大名誉教授はこんな意見だ。

「古代の律令法には『譲位の帝』を『太上天皇』という正式名称がある。ただ皇室典範にその敬称がないため、それを追加する改正が必要」

 目の粗さは御簾の向こうのお財布にも及ぶ。他ならぬ、皇室の財務を定める「皇室経済法」の扱いだ。

 皇室ジャーナリストの神田秀一氏によると、

「天皇・皇太子ご一家に関する『内廷費』が設けられ、この総額は年3億2400万円。退位の場合、不在となる皇太子分が浮く。けれど、その同額を旧・両陛下に充てるのは非常識でしょう」

 実はこれら法規則に定められていないのが、両陛下のお住いだ。というのも皇居とは天皇のお住いであり、つまり赤坂御用地が皇居となる可能性がないわけではないから。とはいえ、

「宮中三殿や宮殿、宮内庁本庁舎や皇宮警察本部庁舎など、様々な本拠地は今の皇居にあります。数年間の準備期間を経て、皇太子殿下もお住いになられることでしょう」

 と皇室ジャーナリストの山下晋司氏は見立てるのだ。

 となれば、皇居で皇太子さまご一家との“二世帯同居”が始まるのだろうか。

「昔の太上天皇は辞めてからも影響力を行使しようとしましたが、全てを譲った後は何も口出ししないというのが陛下のお考え。次代の天皇に関与していると誤解されないため、皇居の外に出られるかもしれない。那須や葉山などの御用邸、更に京都の大宮御所なども考えられます」(所氏)

 おふたり共に傘寿を超えてのお引越しとなりそうだ。

「特集 『天皇陛下』生前退位に12の大疑問」より

週刊新潮 2016年7月28日号掲載

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