休みのない天皇陛下 健康診断は毎日2回 切った爪も保存

社会

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 休みなし、定年なし、プライバシーなし。天皇は、日本でいちばん過酷な職業だ。もちろん健康管理も念入りになる――はずだが、実態はよくわかっていなかった。

「さまざまな資料を読み込んでいくと、1945年ごろの天皇は1日2回、侍医の診察を受けていたことがわかります」

 と言うのは、『天皇陛下の私生活 1945年の昭和天皇』の著者、米窪明美さん。当時、天皇は皇居内の防空施設「御文庫」で生活しており、朝はリビング、夜は寝室で診察を受けていた。

「朝食後の診察は侍医の間で『伺候』とか『お辞儀』と呼ばれていました。朝の挨拶を申し上げるという形をとりながら、顔色などを拝診するのです。じろじろと穴のあくほど顔を見つめ、お変わりございませんか、と尋ねて、お返事から声の張りも確かめます」

 拝診のとき侍医は白衣をつけない。白衣は患者の持つ菌から医者を守るという意味があるので、両陛下の前で着るのは失礼にあたるからだ。ふたたび米窪さんが言う。

「天皇の就寝時間は午後10時。その頃を見計らって当直の侍医が寝室にうかがいます。ベッドの傍らに置かれた椅子にぽつんと座って待っている天皇に体温計を差し出し、4分ほど脇にはさんでもらいます。平熱は35度7分でした。待っている間に脈を測ります。薬を差し上げると天皇はいつも『この薬はいつ食べるのか?』と訊いたそうです」

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毎日検便、週1検尿

 便も毎回チェックされた。天皇は用を足したあと水を流さず、侍医は夜の拝診の前後に御厠場(トイレ)を拝見、侍医日誌と呼ばれるカルテ(和紙で和綴)に毛筆で記録した。また、週1回はおじゃじゃ(小水)を採取して精密な分析が行なわれた。

 このほか、週1回、30分から1時間ほどの定期健診があった。

「定期拝診のときにはパジャマを脱ぐのですが、天皇は部屋中に脱ぎすてるといった感じで勢いよく裸になったそうです。そして、丸椅子に座った天皇の周囲を侍医が歩きまわって拝診。リンパ腺は手で触れて確かめ、胸や背中は打診してから聴診器をあて、横臥してもらってお腹を拝見、さらに血圧を測りました」(米窪さん)

 体重は月末に量った。その日の朝、分銅式で全体に蒔絵が施された体重計が御寝室の近くに置かれる。目覚めた天皇は眼鏡を外してパジャマ姿のまま体重計にのり、着替えを済ませるとパジャマが侍医に手渡された。体重計の数値からパジャマの重さを引いたものが天皇の体重というわけだ。

「ちなみに、足の爪を切るのも侍医の仕事でした。天皇の爪は固く扱いが難しいので専用の爪切り道具(普通の爪切り、曲がった爪用の鋏の形をした爪切り、爪を磨くヤスリ)を駆使して、手術に慣れた外科医が担当しました。手の爪はいつも皇后が切ってくれるので、侍医たちには触らせなかったといいます。向い合って仲良く爪を切る両陛下の様子が目に浮かびます」(米窪さん)

 爪や髪の毛は女官が集めて年月日を記し、封をした。新任の者がゴミ箱に捨てようものなら、大目玉を食ったそうだ。

デイリー新潮編集部