高飛び込みの金メダル有力候補 板橋美波しかできない「前宙返り4回半抱え型」

スポーツ週刊新潮 2016年5月5・12日ゴールデンウイーク特大号掲載

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 世界でも、高難度の大技「前宙返り4回半抱え型」を繰り出せる女子は、板橋美波選手ただ一人。弱冠16歳にして、リオ五輪高飛び込みの金メダル有力候補という超新星となって現れたのである。とは言っても、普段は、漫画やJ-POPの好きな高校2年生なのだ。

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板橋美波選手

 高飛び込みは、異なる演技を5回披露し、総合点を争う競技。一躍、板橋選手が脚光を浴びるようになったのは、昨年6月の「日本室内選手権」で、404・20というハイスコアを叩き出してからだった。

 前回のロンドン五輪では、陳若琳選手(中国)が422・30で金メダルに輝き、366・50のブローベン選手(オーストラリア)がそれに続いた。つまり、ロンドン五輪ならば、板橋選手の得点は、銀メダルに相当するのである。その武器は、なんと言っても、誰も真似のできない「前宙返り4回半抱え型」だ。

 そもそも、なぜ、この大技を体得しようとしたのか、板橋選手本人はこう語る。

「JSS宝塚スイミングスクールで飛び込みを始めたのは、小3からです。中2の夏、自分からコーチに、“前宙返り4回半抱え型に挑戦したい”と言いました。最初、全身を水面に叩きつけ、太腿とかは茄子のように紫色に腫れ上がった。もう懲り懲りでしたけど、先輩の男子選手に、“もう一回、やってみよう”と、誘われて。まずは、低い台から練習を始め、中2の年末に参加した中国の合宿で、高飛び込みの10メートルの台からチャレンジしたら、いきなり飛べちゃったのです」

 公式の大会では、中学3年のときに行われた関西選手権で、初めてその大技を披露し、それ以降、徐々に精度を高めていったという。

■鍛え上げた筋肉

 板橋選手は、どこが優れているのか。

 日本水泳連盟で飛び込み競技の強化コーチを務める、金戸恵太氏が解説する。

「飛び込みは、ウェイトリフティングの次に瞬発力が必要だと言われている。ジャンプをし、一瞬のうちに身体を急回転させなければならない。身長の面では、高い方が技が大きく、華やかに見え、しかも、強い回転力もつきやすいという利点があります」

 だが、板橋選手は身長150センチで、女子選手のなかでも小柄なのだ。

「その分、彼女は厳しいトレーニングによって、瞬発力と軸のぶれない回転力を生み出す筋肉を鍛え上げました。結果、世界で初めての大技を身に付けることができた。飛び込みでは大技を1つ持っていると、採点されるうえで、非常に大きなアドバンテージになるのです」(同)

 残る課題としては、後宙返りと前逆宙返りの演技における苦手意識を克服することができれば、メダルも夢ではないという。

 あらためて、リオ五輪について、板橋選手に話を聞くと、

「初めての舞台になるので、これまでにはない緊張感があるでしょうけど、周りの選手は気にせず、自分自身に勝とうと思っています」

 と、気を引き締める。

「試合前にはよく、Superflyの『タマシイレボリューション』を聴いて、気持ちを奮い立たせてきました。あと、遠征には必ず、『名探偵コナン』を何冊か持っていき、気分転換を図るようにした。リオ五輪でも、同じように準備していくつもりです。普段通りにすることによって、気負いなく実力が発揮できれば表彰台に立てると信じています」(同)

 飛び込み競技日本人初のメダルは、16歳の女子高生がもたらすか。

「ワイド特集 淑女たちの疾風怒濤」より