三浦知良が語る「バッシングとの向き合い方」――アウェーとやじ、女子サッカー

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 海外に移籍した日本人サッカー選手について、現地メディアの厳しい評価が伝えられることが多い。イタリア、セリエAのACミランに移籍した本田圭佑選手も、最近の試合でようやく「合格点」を与えられていたが、長い間酷評にさらされていた。

 慣れない土地、チームに移籍したばかりといった事情を、メディアは斟酌してくれない。他人事ながら、気が滅入らないのだろうかと心配になってしまうところだ。

 しかし、こうしたバッシングや批判があってこそプロだ、と断言するのは、47歳にしてなお現役のキング・カズこと三浦知良選手。この数年の思考の過程をまとめた最新の著書『とまらない』(新潮新書)の中で、カズは独自の思考法を披露している。「『アウェー』と『やじ』」と題したコラムから引用してみよう。

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 11試合勝利のない横浜FCの選手がサポーターにけなされ、食ってかかる一幕があった。

「名指しでバカにされたのに黙るのはおかしい」

 一理ある。ただね、僕はサッカーに関することなら何を言われても腹は立たない。仕方がないと。

 試合中になじられたとしても、仮に最後の最後、1-0でもいいから勝てば誰もそんなこと言わなくなるわけでしょう? 見ている人はそういうもの。

「こっちも懸命なんだ」と言い返す選手もいる。でも一生懸命やったかどうかも、僕らが決めることじゃないんだ。外から見る人たちが決めることなんだから。

 ブラジルで最初は「ジャポネーゼ」とバカにされた僕が、やがて「カズ、ばか野郎」とやじられたときは感慨深かった。日本人というくくりを超え、個人として認められたんだなあと。「国境を越えるブーイング」はいいもんだね。

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 もう一つ、女子サッカー日本代表がワールドカップで初優勝した直後に書かれた「批判されてこそ文化」というコラムにも、カズならではの「バッシング論」が。

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 女子サッカーがブームで終わらないためには、代表の社会的位置付けも大切だ。国際試合で常に勝てるわけじゃないから、結果が出せないときも来る。そのとき監督や選手は世間から批判を受けるだろうか。

 男子の代表は負けが込むと、ひどいたたかれ方をする。歴代の監督もやってきたことをすべて否定されるような時期があったし、選手も大きな重圧を受ける。良ければ褒められて、悪ければぼろくそにたたかれる。そんな経験を乗り越えて、代表のステータスが出来上がってきたんだ。

 女子の場合、今はまだ祭りの後の余韻に浸っている感じで、周りも100パーセント味方の状態。そうじゃない声が出てきたときが本物なんだ。スポーツ紙の1面で「その戦術じゃ駄目だ、監督を代えろ」とか「あの選手は使えない」と批判されたり、普段の会話の中で議論が沸き上がったり。

 たたくということは関心があるわけで、そこまで世間の対象になっているということ。遠慮なしに批判されるようになったときに初めて、女子サッカーが文化として根付いたと言えるんじゃないかな。

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 日本人選手が海外で厳しい批判を受けるのも、期待されているからゆえ、と思っておいたほうが良いようだ。

デイリー新潮編集部