「処女が大好きで結婚もしてないってどういうオッサンだよ」ヤマザキマリ×とり・みき×片山杜秀

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 新潮社とサザビーリーグが手を組み、神楽坂に誕生した新業態の商業施設「la kagu」。

「衣食住+知」をテーマとして掲げるこの施設、二階には新潮社が主催するレクチャースペース「soko」が設けられ、文化の発信基地としての役割も担ってゆく。

 そのこけら落としとなるイベントが10月13日(祝)台風が迫る中、満員の聴衆を集め開催された。

 登壇者は『テルマエ・ロマエ』で一躍名をあげた漫画家のヤマザキマリ、ギャグ漫画を主軸にしながらSF・ホラーなどにも定評のある漫画家とり・みき、思想史研究や音楽評論で幅広く活躍中の慶応義塾大学教授片山杜秀。イベントのテーマは「われらが愛する『奇人変人』」。古代ローマの博物学者プリニウスを題材にした漫画『プリニウス』を連載中のヤマザキさんととりさん。そして自身も博覧強記、奇人変人についても造詣の深い片山さん。ただ者ではない三人が古代ローマから日本の漫画まで語りつくした。

共作の秘密

 鼎談は『プリニウス』共作の実態に片山さんが切り込むところから始まった。

 よく共作というと「原作と作画でしょ」と勘違いされるが、二人はその実態は完全なる共作で「第三の漫画家があらわれる感じ」 (とり)と語る。ヤマザキさんがおおまかなストーリーを提案。編集者のようにとりさんがコンテに手を入れ、どこを描くかを分担。ヤマザキさんはイタリア、とりさんは日本と遠く離れているため、インターネット電話のスカイプを使って相談していると明かした。

 主に人物をヤマザキさん、風景をとりさん。ペン入れを紙に行い、その画像をスキャナでPCに取り込み、とりさんが「特撮監督になったような気分で」 合成するという。背景と前景を合成する映画やドラマ、アニメのような作り方だと明かしてくれた。

 その後とりさんは「雑誌などでは絶対に明かさない」 と語りながら、自身のPCをプロジェクタに繋ぎ、各コマを分解して見せ、イベント参加者だけに共作の秘技を明かしていた。

■処女が大好きな変人? プリニウス

 ヤマザキさんは今回の漫画の題材となっている博物学者プリニウスについて、彼の著した百科全書『博物誌』は人となりが露見していて面白いと語る。ことあるごとに処女についての言及が多く、プリニウスには処女信仰があったと語り「処女大好きで結婚もしてないってどういうオッサンだよ」 と笑いを誘った。

 三人の話はプリニウス以外の奇人変人にも広がり、片山さんは植物の分類で有名なリンネの名前を挙げた。「分類学の父」とまで称されるリンネが周りの人に起こった『神罰』を分類して記録していたというおかしなエピソードを挙げ、多面的な価値観が混ざり合った奇人たちの面白さを語り、鼎談は大いに盛り上がった。

 la kaguでは今後も新潮社主催の魅力的なイベントが多数開催される予定だ。今月だけでも角田光代、よしもとばなな、蜷川幸雄、祖父江慎、平野啓一郎などそうそうたるメンバーが並ぶ。

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