プロフェッショナル同士の合作! 『テルマエ・ロマエ』ヤマザキマリ×ギャグ漫画家とり・みき 漫画史上に残る快挙『プリニウス』

文芸・マンガ

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『テルマエ・ロマエ』のヤマザキマリ、そして「理数系ギャグ」の第一人者として知られるとり・みきの合作漫画『プリニウス』第1巻が売れている。発売一週間で早くも増刷が掛かる勢いだ。

 プリニウスとは、古代ローマの博物学者。ヴェスヴィオ火山の噴火により死んだことで知られ、ヨーロッパの教科書で必ず名前が出てくる大有名人であり、日本では澁澤龍彦が書いた『私のプリニウス』という名エッセイで知られている。

■プロの漫画家同士が組んだ特異な関係

 漫画の場合、原作者付きなのはよくあることだが、ストーリー展開と作画の両方に、漫画家2人が緊密にかかわる合作は珍しい。両著者ともファンの多い漫画家でキャリアも長いが、ここまで本格的な合作は初めてである。しかし、結果としては古代ローマ社会をそっくり再現したような圧倒的な描写力が読者を魅了し、「この二人が二十年早く組んでいれば、漫画の歴史が大幅に変わっていたのではと感じる程に、超マッチング。キン肉マンとキン肉マングレートのタッグ結成を見たかの様な慶び」というツイートもあるほど呼吸が合っており、西原理恵子さんなど同業の漫画家の間でも驚きが広がっている。

 もっとも。2人は長く近い関係にあったわけではない。『テルマエ・ロマエ』の連載が終盤を迎え、ヤマザキ氏1人ではきつい状況になり、「古代ローマの背景を描けるアシスタントを募集します」とツイートしたところ、たまたま連載が終わって一時的に時間が空いていたとりさんがテスト原稿を送付。そのクオリティの高さにヤマザキ氏が腰を抜かして、というのが前段で、プロ同士が認め合う、という清々しい関係がはじまったのだ。実際、とり氏の背景の力はすさまじい。

このページの各コマなど、古代ローマの街を主人公の視点から映画で撮ったようで、
キャラの魅力を最大限に引き出している。

 点描が基本で、どんなに締め切りギリギリになっても点を打ち続けていて、1回分の原稿の中でも点々の数はとんでもない。それを締め切り優等生のヤマザキさんがハラハラしながら見守るという特異な関係のあり方は、世界の漫画史上でも例を見ない。

■古代ローマにいた南方熊楠の「元祖」

 とり氏の子供の頃の夢は「特技監督」であり、この漫画を描くことで半分夢がかなったという。ヤマザキ氏のダイナミックなキャラに背景をつけ、相乗効果を出してゆくのはフィニッシャーのとり氏の役目である。古代ローマにいた南方熊楠の「元祖」ともいうべきプリニウスのキャラは、とり氏が敬愛する小松左京に重なり、澁澤龍彦的世界にSF風味もあるという、不思議な味わいの作品に仕上がっている。今後の展開に注目したい。

デイリー新潮編集部