百田尚樹氏「結婚のコスパ」を語る 「なんでもコスパで考えるバカ」

社会

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「コスパ」(コストパフォーマンス・費用対効果)という言葉が一般化してから久しい。特に若い人がよく使うのだが、これに何となく抵抗があるという人も珍しくない。

 作家の百田尚樹氏もその一人。新著『大放言』では、「なんでもコスパで考えるバカ」という一節を設けて論じているほどである。

 百田氏は、若い人と飲食店について話している際に「あそこはコスパがいい」「コスパが悪い」といった物言いを耳にするにつけ、「ある意味で合理的と言えるかもしれないが、そこには何か大事な価値観が抜け落ちている」と感じたという。

 百田氏は「数値化できない『何か』が、人生の幅を広げてくれるような気がする」とも述べているが、すでに世間では「結婚のコスパ」問題についても議論されているような状況だ。この件について、百田氏はテレビ局での若いディレクターとのやり取りを紹介しながら、次のように私見を述べている(以下、『大放言』第一章「現代の若きバカものたちへ」より)

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■究極のコスパ

 テレビ局で若いプロダクションのディレクターと話していて、私がたまたま彼に向かって、「○○君は結婚しないのか」と訊いたときのことだ。35歳になる独身の彼はこう答えたのだ。

「今のところは考えてないですね。結婚は、コスパが悪いですから」

 出た、コスパ!

 私の驚きをよそに彼は続けた。

「結婚するとなると、広いところに越さないといけないし、生活用品も食費も増える。はたしてそのメリットがあるかということです」

 すると、そこに品のないことで評判の中年のディレクターがやってきて、ニヤニヤして言った。

「そやけど、結婚したら、アレがただになるで」

 すると若いディレクターは逆に彼に訊いた。

「△△さんは、今、奥さんとセックスしてますか?」

「長いこと嫁さんとはしてない」

「いつからセックスレスですか」

「2人目のこどもができてからやから、15年くらいはしてないな」

「じゃあ、それまでに何回しましたか」

「そんなにはしてないな。100回くらいかな」

「じゃあ、1回あたり、すごく高くついてませんか? ソープに行ったほうが安くすむでしょう」

 中年ディレクターは「ほんまや!」と感心したように言った。

「お前の言う通りや。ソープは毎回相手も変わるから新鮮や。自分のしたい時にできるから、義理でやることもない。ほんで、飯も食わさんでええし、酒も飲まさんでええ。ええところだらけや。よう考えたら、結婚したのは失敗やった」

「でしょう」若いディレクターは得意そうに言った。「それに美人の嫁さんもらっても、10年も経ったら、おばさんですよ」

「ほんまや。俺の嫁さんも昔はそこそこやってんけど、今は目も当てられんわ。これからどんどん悪くなる」

 私はその会話を聞いて笑いながら、心の中で「○○君」と言った。

 なんでもかんでもコストパフォーマンスで考えるのはやめろ。そんなことを言いだしたら、お前の人生自体、この社会から見たら、ろくなコストパフォーマンスじゃないぞ。

 そのとき、中年ディレクターがぼそりと言った。

「でもなあ。それでも結婚ってええもんなんや。俺は嫁さんがババアになっても、こいつと一緒になってよかったと思う」

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 果たして結婚はコスパがいいのか悪いのか。周囲の既婚者に意見を聞いてみても面白いかもしれない。

デイリー新潮編集部