「スパイ罪」認定なら最長で拘禁20年…窮地の「北海道新聞記者」をプーチンからどう救うか 政府が極秘検討する“2つの構想”とは
ロシア連邦保安局(FSB)は10月13日、北海道新聞ユジノサハリンスク支局の日本人記者をスパイ容疑で拘束したと発表した。記者はモスクワに移送され、裁判所は2カ月の勾留を認めた。北海道新聞社は、日本政府の指示による取材や情報収集を否定している。日本外務省は21日、中村仁威欧州局長がロシアを訪問し、現地時間20日にロシア外務省高官と会談したと発表した。
中村氏は即時解放と、領事面会の早期実施を求めた。26日にようやく在ロシア日本大使館員による領事面会が実現し、健康状態に問題がないことが分かったとされる。日本政府は果たして、どのような解決策を検討しているのか。内情を取材すると、現在のところ、 拘束が中長期化するという懸念が現実のものとなった場合は、2案が持ち上がっていることがわかった。
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長い闘いも
当面の焦点は、身柄の解放に加え、面会と弁護活動の確保である。しかし、勾留延長や裁判による長期化、最悪の場合は刑の執行まで想定しておかねばならない。ロシアで適用されるスパイ罪は、有罪なら最長20年の拘禁刑となる。外交交渉による解放への取り組みは待ったなしである。同時に、長い闘いになることも覚悟しなければならない。
短期の交渉が不調に終わったり、不幸にも中長期的な対応を余儀なくされたりした場合には、捕虜やスパイ犯の身柄交換による解放を模索することが、国際社会では定石の一つとされる。もちろん、日本は戦後一貫して戦争に参加しておらず、捕虜はいない。スパイの摘発も、他の先進国に比べて遅れている。このため、国家間の身柄交換交渉になじみが薄いのは、やむを得ないことだ。
2つの構想
しかし、現在ロシアと戦争状態にあるウクライナ、さらに日本の同盟国である米国の協力を得られれば、政府間の交換交渉に持ち込むことは不可能ではない。
その選択肢として、日本政府内の一部で二つの構想が浮上している。一つは、米国にロシアとの間でスパイ犯らの身柄を交換してもらい、そこに当該記者を加える方策である。もう一つは、ウクライナにロシアとの捕虜交換を行ってもらい、その対象に拘束された北海道新聞記者を組み込む案だ。
ただ、いずれの案も、日本政府が米国、ウクライナ両政府にそれぞれ依頼しなければならない。日本政府自身は、身柄交換を行う一方の当事者にはなれないためだ。この点で、実現には一定のハードルが伴うことが大前提となる。そのため、表立って貸し借りをうたうことはなくとも、日本政府には見返りとして、米国あるいはウクライナに対するさまざまな貢献が求められる。これもまた、実質的な前提条件である。
アンカラ、26名の交換
第1案は、米国が拘束しているロシアの情報活動関係者らを解放してもらい、ロシアにも拘束中の米国人らの引き渡しに応じてもらった上で、日本人記者の解放を追加するというものだ。
この形に近い例として、2024年8月にトルコの首都アンカラで行われた、米ロを中心とする計26人の交換が挙げられる。ロシアとベラルーシから16人が解放され、西側からは米国、ドイツなど5カ国が10人を引き渡した。
この時、米国はサイバー犯罪や密輸などで服役・拘束していた複数のロシア人らを釈放した。これに対し、ロシア側からは、米大手報道機関の米国人記者や、大麻に絡んで拘束されたドイツ人旅行者、英国籍保有者が解放された。同時に、ロシアは自国の反体制活動家らも釈放し、国外へ追放するなどした。多国間の枠組みで交渉が行われ、結果として、さまざまな国籍の人々が引き渡されたのである。
米国は当時、同盟国をまとめ上げ、ロシアは工作関係者らを取り戻した。国籍や人数が釣り合わなくても、各国が利益を得られる合意は成立し得るという一例である。ただ、ロシアは解放対象に自国の反体制活動家らを含めており、ロシア側に有利な内容だとの指摘もあった。
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