天才しかいない東京藝大で“個性を獲得する”ことの意味…卒業生の現代アート作家は恩師の「キャラクターの線がいいな!」で決意

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 美術学部や音楽学部などを擁し、“芸術界の東大”と呼ばれることもある東京藝術大学(以下、藝大)。しかし、その実態はヴェールに包まれている。そもそも、美術系の大学を受けるにはどんな受験勉強をすればいいのか、どんな受験科目があるのかなど、一般的な大学と比べると知られていないことのほうが多い。

 今回は、卒業生の中風森滋氏(美術学部絵画科油画専攻)にインタビュー。中風氏が言うには、基本的に藝大は学生の自由度が高く、何をするかは個人の裁量に任せられている部分が多いのだという。そしてあらゆる美術を学べる設備が揃っており、学生は恵まれた環境にあるようだ。

 しかし、そのぶん学生たちは自ら探求を深め、課題を見つけてそれを乗り越えていく必要があるという。そういった意欲がある人でなければ、藝大で学びを得るのは難しいようだ。キャラクターをテーマに制作した独特の作風で知られる中風氏は、藝大でいかにして自身と向き合い、個性を獲得していったのだろうか。【取材・文=山内貴範】(全2回のうちの第2回)

教授の影響は結構大きい

――藝大の学祭や卒展にいくと感じますが、絵画科の学生の作風は本当に多種多様ですし、表現の仕方も十人十色です。卒業の際には、入学時とまったく異なる作風になる学生も珍しくありません。どうやって個性を獲得していくのでしょうか。

中風:教授の影響は大きいと思います。自分の時は画壇系の教授がほぼいなくて、影響力があったのが小林正人先生や中村政人先生、保科豊巳先生など、絵画の概念を拡張しようとする作品を作り、絵画の枠に収まらない表現をするアーティストがたくさんいました。自分の場合は、小林先生の影響が大きいですね。

――在学中に卒業後の進路も考えなければいけませんよね。藝大の卒業生全員がアーティストになるわけではなく、一般企業に就職したり、教師などの指導者になる人もいます。中風さんが、アーティストとしてやっていこうと決めたのはいつ頃なのでしょうか。

中風:大学院2年の夏です。前に話したように、学部4年で美術について学び、大学院に進んで自分が描くテーマを決めようと考えていました。

 1年目はカオス*ラウンジの影響が大きくて、「アンパンマン」や「セーラームーン」などの既存の作品をベースにした絵を描いていましたが、違和感があったのです。俺は現代美術でコンセプチュアルなものを作りたいのかな、と。既存のキャラクターを使えば確かにわかりやすいけれど、それは俺の気持ちと違うなと思っていたのです。

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