受験の課題は「今晩のおかずを描きなさい」…OBアーティストが明かす“東京藝大”天才たちの日常 「“マイケル・ジャクソンしか描きたくない!”という人もいましたね(笑)」

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“人間のバリエーション”がとてつもなく多い

――今、天才的な人が多いという話が出ましたが、藝大というと、数ある国立大学の中でも個性的な学生が多いというイメージがあります。中風さんの周りにも、変わった行動をとる人はいましたか。

中風:たくさんいましたね(笑)。プライバシーにかかわるので、どこまで言っていいのかな……という感じですが。例えば、科学が好きで、東大に行こうか藝大に行こうか迷って藝大に入学、アトリエで科学実験をして芸術と科学の関係を探っている人がいました。

 あと、マイケル・ジャクソンが好きすぎて、「マイケルしか描きたくない!」という人。彼は先ほどの話に出た「LOVE」の課題でも当然マイケルの絵を描き、さらにアメリカにあるマイケルの墓に絵を届けに行くと言っていました。1年生の時に狩猟免許をとって、猟銃を家に置いてあったせいで、警察が来ちゃったという人もいました。

 センターで国語を15点しかとれずに入学した人もそうですが、1日中パチンコばっかりやっている人、ソシャゲをやって堕落を極めている人など、“人間のバリエーション”がとてつもなく広かったな、というのが印象に残っています。

――話せる範囲だけでも濃いキャラクターの集まりですね。ほかに、印象的だった授業はありますか。

中風:2年のときに古美術研究という授業がありました。奈良や京都のお寺に泊まって精進料理を食べたりする日々を送りながら、日本の古美術や古建築を見るのです。普段は入れないようなところに特別に入れてもらって、有名な画家の襖絵を見せてもらったのは本当に感動しました。藝大生でないとできない体験ができたのは、創作の糧になっています。

 あと、上野の東京都美術館などにはよく行きましたね。ギャラリー巡りもして、現代の作家をリサーチすることもやりました。「カタコンベ」というアーティストが集まるスタジオに遊びに行ったりして交流を深め、作家しかわからない悩みや話を聞きいたりもしましたね。

失踪する人がいるって本当?

――中風さんは藝大の外でも様々な芸術に触れていたのですね。気になるのは、藝大を卒業するのは大変なのか、ということです。

中風:藝大は入ったら卒業が楽で、多摩美(多摩美術大学)や武蔵美(武蔵野美術大学)の3分の1くらいの単位をとればいいんですよ。基本的に自分でやりなさいという方針で、厳しい指導はありません。

 そのぶん環境には本当に恵まれていて、例えば上野校地の絵画棟にある「大石膏室」は、私が在籍していた当時は自由に出入りでき、石膏デッサンを描くこともできました。

――自由で大らかな校風なのですね。そのぶん、自分から進んで探究を続けないといけないわけで、大変な部分も多いと感じます。そういえば、藝大生はよく失踪するという話を聞きますが、あれは本当なんですか。

中風:そういう話は聞きますね。私が学部に所属している時も実際にあったみたいです。

第2回【天才しかいない東京藝大で“個性を獲得する”ことの意味…卒業生の現代アート作家は恩師の「キャラクターの線がいいな!」で決意】では、東京藝大出身の中風森滋氏に、個性的な学風の藝大の中で、どのようにして自らの才能に磨きをかけていったのか、詳しく伺っています。

ライター・山内貴範

デイリー新潮編集部

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