元総務大臣も一刀両断 「簗和生」農水相の発言が「圧力」「ウソ」どちらにせよアウトな理由

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 簗和生農林水産相をめぐり、地元への予算配分を自身の政治力と結びつける発言が波紋を広げている。国会議員が省庁に働きかけ、予算を増減させることは実際に可能なのか。鳥取県知事や総務相などを歴任し、現在は大正大学特任教授・地域構想研究所所長を務める片山善博氏は、元自治省官僚としての経験を踏まえ、行政の実態と政治家の責任について語った。

建前では議員からの圧力を受ける余地はない

「建前で言ったら、もちろん議員が圧力をかけて交付金や補助金に口を出せるということはありません。役所は一定の基準やルールに基づいて予算額を算定しますから、議員からの圧力を受け入れる余地は存在しません」

 しかし、片山氏自身、自治省の官僚時代には、国会議員から予算に関する根回しを受けることは珍しくなかったという。地元の首長を連れてきて地域の事情を丁寧に説明する議員もいれば、威圧的な態度に出る議員もいた。

「『俺の言うことを聞かないと、お前を霞が関から追放してやる』と言われたこともありました。私は基本的に特別扱いしませんでしたが、弱腰の役人がいれば、多少の無理筋が通る可能性は否定できません」

 役所の側にも、「あれほど熱心に言われているのだから、多少は色をつけておこう」という心理が働くことはあり得る。基準やルールがあっても、実際の算定過程が外から見えにくければ、政治家の働きかけが結果に影響したかどうかは判然としない。

「減らせ」と言う議員は普通いない

 もっとも、国会議員からの要望は、通常「予算を増やしてほしい」というものがほとんどだという。

「『増やせ』という話はずいぶんありますが、『減らせ』と言ってくる議員は普通いません。自分を支持しなかったことに対して、ここまではっきりと脅しのような言葉を明言したケースを、私は知らないです」

 選挙の際に「自民党に入れた方がいい目を見ますよ」と訴える政治家はいても、「自民党に入れなかったから予算を減らしてやった」というケースは、まず聞かないという。

予算の減額はどう決まるのか

 もちろん、箇所付け(公共事業における場所と予算の割り当てのこと)で自治体への内示額が減ること自体は珍しくない。要望額に対して、配分がゼロになることもある。

「ただ、予算は概ね事業量に比例するものです。国土交通省の場合、道路の事業量や前年との差異などを吟味すれば、少なくとも省内では減額した場合、その理由を把握できるはずです」

 国会議員が省庁に働きかける時期については、おおよその傾向がある。各都道府県から上がってきた申請を省庁が検討し、要望内容などを吟味して金額を決める。その過程の時期であれば、働きかけが行われる可能性はあるという。

「政府全体の予算案が正式に決まるのは12月末です。陳情する側としては行政に印象づけたいので、夏や秋ごろから官僚に『よろしく、よろしく』と言うことが多い。もっとも、ほとんどは『増やしてくれ』という要望ですが」

 予算の基準が明確でも、実際にその基準どおりに算定されたかどうかを外部から検証するのは容易ではない。だからこそ、政治家による圧力や根回しがあったのかどうかも、不透明になりやすいのだ。

「見せしめ」のつもりか

 では、簗氏が予算を減らしたと吹聴することで、本人に何か得があるのだろうか。片山氏は、必ずしも得がないとは言い切れないとみる。

「『俺を応援しないと、こんなに予算を減らせるんだから、次からちゃんと俺に投票しろ』というメッセージにはなりますから」

 自分を支持しなかった地域に不利益を与えられると示すことで、次の選挙では自分を支持するよう促す。そんな意図があった可能性も考えられるという。

「『品のない人には、ますます入れてやらん』となる人が増えると私は思いますけど、本人としては『見せしめをしたから、次から俺のところに来るだろう』という狙いで言っているのでしょう」

政治家に不向きで大臣は失格

 片山氏が問題にしているのは、発言が示す政治家としての姿勢そのものだ。

「『減らしたぞ』ということを吹聴するのは、本当に品のないことだと思います」

 本当に圧力をかけて予算を減額させたのなら、行政の公平性を損なう不当な介入だったのではないかという疑念が生じる。反対に、実際には何もしていないのに減額を自分の手柄として語ったのなら、発言の信憑性が問われることになる。

「いずれにせよ、簗氏は政治家に向いていないと思います。ましてや大臣なんてもってのほか、失格だと思います」

 予算配分は、本来、地域の事情や事業の必要性などに基づいて決められるべきものだ。政治家が有権者の支持と予算の増減を結びつけるような発言をすれば、行政が公平に運営されているのかという疑念を招く。簗大臣の発言をめぐって問われているのは、単なる言葉の選び方ではない。国民全体の代表である政治家に、行政の公正さを守る意識があるのかという問題なのである。

デイリー新潮編集部

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