「どんなに立派な戦闘機を持っていても、食糧がなければ戦えません」 石破茂前首相が語る「筋の通った農業論」

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コメ問題をどう考えるか

 恫喝発言やシャトルバス問題で辞任することになった簗和夫前農水大臣の後任は武部新氏となった。後任人事については、「農水大臣経験者あたりから選ばれるだろう」という見方を口にする人は少なくなかった。武部氏は大臣経験こそないものの、農水副大臣経験者なのでまずは無難な選択と言えそうである。新大臣の下、農林水産業に関する建設的な議論が行われることを期待する国民は多い。

 どちらかというと防衛族のイメージが強い石破茂前首相もまた、農水大臣経験者。

 コメ価格の問題など、これから武部新大臣が取り組む問題について、石破氏はどのように考えているか。新潮QUE掲載のロングインタビュー(「トランプ大統領と話すにあたって重要なのは二つのカンジョウ」 石破茂がいま明かす関税交渉の裏側)から、コメ問題に関する石破氏の持論を見てみよう(以下、同記事から抜粋・引用)。

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生産調整はおかしい

(記者)コメのことは与党内でも立場が異なる人がそれぞれの主張をしていて、何が正解なのかよくわかりません。どのように考えていますか?

(石破氏)コメについては長い間、考えてきました。

 まずコメという商品の特性として、価格弾力性が非常に小さいということを前提に考えなくてはなりません。そして価格の変動が多少あっても、買う人は買うし、買わない人は買わない。そういう商品でもあります。それゆえにわずかでも需給のバランスが崩れると、価格が大きく振れるという性質がある。

 そしてまたコメは基本的に年に1回の収穫なので、そんなに収穫量を自在に増やすことができない。

 2024年から2025年にかけて価格が暴騰したのは、作らなさすぎる状況が背景にあったわけです。生産を絞っているところに不作が重なったので、当然、価格は大きく上に振れる。

 生産調整は止めようということは、農水大臣をやっていた頃(麻生内閣)から主張していました。政府が生産調整をすること自体がおかしいという考え方です。

 そして実際に、第二次安倍政権の時、2013年に生産調整を5年後の2018年にやめることになっていたはずでした。ところが実際にはやめておらず、生産調整っぽい実態は続いていた。いわゆる減反政策としては2018年に終わっていたけれども、実態としては続いていたわけです。

(記者)その「実態」を良しとはしないということでしょうか。

(石破)その頃(第二次安倍政権)の日本の食料自給率がカロリーベースで38%くらいだったかな、先進国の中でも非常に低いままでした。それでいいのかという問題意識は強く持ち続けていました。

 防衛力増強のために自衛隊の装備品を充実させるという考え方は一定の理解を得ていますよね。戦車、戦闘機、駆逐艦等々にかなりの予算をつぎ込みます。

 でも、腹が減っては戦はできない。どんなに立派な戦闘機を持っていても、食糧がなければ戦えません。

 そして世界中が食糧の増産に力を入れているなか、日本だけが税金を使って農地を減らし、耕作放棄地を増やし、生産を制限している。これは安全保障上の観点からもいいはずがありません。
(略)

(記者)しかし実際にコメを食べる人が減っている以上、作ったところで余るだけ……という問題があるのではないでしょうか。

(石破)40年前の初当選の頃、農水族の駆け出しだった頃から、日本のコメを輸出するって不可能なのだろうか、と言っていました。

 その頃は、

「お前、何言ってるんだ、日本のコメみたいな粘り気のあるものは世界の人は食べないんだ。タイ米のようなコメが人気があるのだ」

 という反応が大半でした。

 農林水産総括政務次官、今の副大臣のような立場になったのは森内閣の時。この頃になると、世界で日本酒の評価が高まり、またニューヨークなどではおにぎり屋さんも人気を集めていました。

 その状況を見ると、世界で日本のコメが売れないのは、品質の問題ではなくて、価格など他の要因があるのではないかと思えてしまうわけです。

 日本米を買える経済力が相手国にあれば、あるいは日本米がもう少し安ければ、もっと買ってもらえるんじゃないかということです。仮にマクドナルドの10分の1でも世界におにぎりのチェーン店が展開されれば、随分状況は変わるでしょう。

 日本側が「日本のコメは人気が無い」と勝手に決めていたから世界に進出できないだけで、実はそのための努力をきちんとしてこなかっただけなんじゃないか。

 このことで常に念頭にあったのはキッコーマンの茂木友三郎氏(同社名誉会長)でした。醤油をアメリカで普及させるために、相当な努力をなさった方です。当初現地では、「なんだこれ」という反応だったのですが、アメリカ人に受け入れられやすいレシピなどと共に提供して、地道に普及を進めていきました。結果、キッコーマンの醤油は世界中で受け入れられるようになったのです。

 そのようなアプローチでコメを世界で受け入れられるようにすれば、輸出を増やすことも可能でしょう。輸出するにあたってコストを下げる必要もある。世界一美味しいけれども世界一高いでは売れない。

 こうして輸出を増やせば、食料自給率も上がります。フランスなどの自給率が100%をはるかに超えて高いのは、輸出分を算入しているからです。

 そしてこうした方針のために税金を投入する――たとえば中山間地の耕作放棄地の解消をした人に対して、コメの価格が下がった際には補償する――といったことの何が悪いのか、と思います。

コメを守ることは国益につながる

(記者)農業や一次産業は大切だということに異論を唱える人は少ないかもしれませんが、税金を投入するとなると、反対論も出てきそうですね。滅びるべき農家は滅びるべきだといった意見はよく目にします。

(石破)滅びるべきといった乱暴な意見は明らかに間違いです。一方でこのままがいいというわけではなく、農地の流動化などは進めていくべきだとは思います。規模拡大には限界があるとはいえ、進めていかないと効率が悪い。

 規模拡大や土地改良には補助金が出て、農家の自己負担はほとんどない形で進めることが可能になっています。なぜそれが許されるかといえば、コメの値段が下がれば、それは消費者の利益にもなるからであり、コストが下がれば農家の利益にもなるから。

 いくら需要が減ったとはいっても、日本人の多くはコメを食べていますから、価格が下がることはみんなの利益になる。ただし、それで不利益を被る人がいれば、税金によって穴埋めをする。これは決して筋の通らない話ではないんじゃないですか。

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 新潮QUE掲載のインタビュー(「トランプ大統領と話すにあたって重要なのは二つのカンジョウ」 石破茂がいま明かす関税交渉の裏側)では、石破政権最大の課題だったトランプ関税にまつわる生々しい話が語られている。

デイリー新潮編集部

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