「六甲おろし」のあとに巨人が胴上げ…阪神の連覇で振り返る“敗戦日に優勝”したチーム列伝
優勝の瞬間にあるドラマ
ちなみに同年は、パ・リーグでも珍しい形で優勝が決まっている。
マジック1の西武は9月21日、ロッテに0対4で完封負け。ところが2位・ダイエーが日本ハムと引き分けたため、4年ぶりのリーグ優勝が決定した。セ、パともに試合に敗れた日に優勝が決まる珍事となったのである。
史上初の4連敗で優勝を決めたのが、2008年の西武だ。
9月21日、ソフトバンクに10対5で打ち勝ち、マジック2とした西武。「今日にもV決定」と報じられたものの、ここから足踏みが続いた。
22、23日と楽天に連敗。2位・オリックスが23日に敗れたためマジック1と王手をかけたが、24日のロッテ戦ではエース・涌井秀章が4回途中7失点と炎上し、3日連続で優勝はお預けとなった。
迎えた9月26日の日本ハム戦。西武打線は先発・スウィーニーのスライダーを引っかけて凡打の山を築き、わずか2安打で完封負け。4連敗と負の連鎖を断ち切れなかった。
実はこの日、ライバル・オリックスが序盤から大量失点しており、西武は負けても優勝が決まる可能性が濃厚になっていた。「自力で勝って優勝したい」という思いが、かえって空回りしたのかもしれない。
0対2で敗れた試合後、スウィーニーのヒーローインタビューが終わるのを待ってから、渡辺久信監督の胴上げが始まった。
就任1年目の栄冠に感極まって男泣きした渡辺監督は、「選手は今年1年頑張ってくれた。勝てないときもあったけど、一戦一戦力をつけて強くなった選手を私は誇りに思う」とナインの健闘をたたえた。
4連敗中のチームが優勝したのは、1960年の大洋が記録した3連敗を更新する珍記録。優勝を決めた試合で2安打に抑えられたのも史上初だった。
一方、西武、オリックスと相次ぐ“上位いじめ”で存在感を見せた楽天・野村克也監督は、「負けて胴上げか。いいんじゃない。敗者(同年の楽天は5位)としては非常に結構。ざまあ見ろ」と意気軒高だった。
西武は優勝決定後も連敗が止まらず、9月29日のオリックス戦まで7連敗を記録している。
前出の渡辺監督と同じく、就任1年目に「敗戦の日の優勝」を経験したのが、2004年の中日・落合博満監督である。
5年ぶりのVへマジック1と王手をかけた中日は10月1日、地元・ナゴヤドームで広島と対戦した。
初回に井端弘和の左越え二塁打で先制したが、2回に先発・ドミンゴがラロッカに同点ソロを浴びる。その後は両軍とも決定打を欠き、1対1のまま延長戦へ入った。
すでに2位・ヤクルトは巨人に逆転負けを喫し、中日の優勝は決まっていた。それでも地元ファンの前で、勝利を添えたいところだった。
しかし12回、リリーフ陣が踏ん張れない。2死後、緒方孝市に痛恨の左越え満塁本塁打を浴びてしまう。
その裏、アレックスの犠飛で1点を返したものの、2対5でゲームセット。皮肉な結果に落合監督は「これも私らしくていいんじゃないか」と苦笑しながら、「いやあ、いいもんですねえ。生まれて初めてです。最高です」と、熱望していた地元での“胴上げの味”に感激しきりだった。
優勝を決めた日に敗れても、Vゴールのテープを切った事実に変わりはない。むしろ、こうした一風変わった優勝決定だからこそ、長いシーズンの積み重ねでつかんだ栄冠であることが際立つ。
勝って決めるか、ライバルの敗戦を待って決まるか。優勝の瞬間には、時として思いがけないドラマが生まれるのである。









