「出身地を尋ねるのもNG」「タバコ吸いました? スメハラです」 誰しもが「加害者」にされかねない「コンプラ社会」の生き方
「出身地を尋ねるのもNG」
一方で“通報”の件数が増えているのも事実。2020年と25年に公益通報者保護法が改正されたのも一役買っているという。
「法改正により、内部通報制度の体制整備や通報者の保護が強化されました。これに伴い、企業の内部通報は指数関数的に増えています。ある企業では、今年の上半期だけで去年1年分の内部通報がありました。もちろん法令違反や不正を通報しやすい体制を築き、企業の自浄作用を促す、という本来の目的に適った通報もあります」(山内氏)
しかし“誤用”も多く、
「上司から意に沿わない指示を受けた部下が“パワハラだ”と通報するケースが増えている。例えば、ある顧客の担当を任されたものの、その顧客と肌が合わなかった場合に“苦手な客を押し付けられた”となるのです。下積み業務を指示された若手が“単純作業ばかりでパワハラだ”と主張することもあります」(同)
こんな事案が増えていれば、恐ろしくて指示など出せなくなるのも無理はない。おまけに、告発されかねないのは指示や指導に限ったことではないのである。
野崎氏によれば、
「近年は、社内でプライベートの話をするハードルが高くなっています。ある大手企業では、人事部の通達により、正社員が派遣社員に住所や年齢、結婚歴、学歴、職歴などを尋ねることが一切禁止になったそうです。住所といっても現在の最寄り駅だけでなく、出身地を尋ねる程度の会話もNGなのです」
想像するだけで息が詰まりそうだが、まだまだある。
「ある中小企業で、50代の男性社員が40代の女性社員に何の気もなく“子供さんは元気ですか?”と聞いたところ、ハラスメント発言だとして新設されたばかりのコンプラ係に駆け込まれてしまった。女性はひたすら“個の侵害だ”と訴えていたそうですが、担当者も困り果てていましたね」(同)
やることなすこと、すべてがハラスメントになってしまうのではないか……。実例を知れば知るほど、そう思ってしまっても不思議はない。こうした社会をどのように捉え、いかにして生き抜けばいいのか。
後編では、ここまでコンプラ社会が加速した要因と、こうした社会の「生き抜き方」について、専門家の声を紹介する。
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