「出身地を尋ねるのもNG」「タバコ吸いました? スメハラです」 誰しもが「加害者」にされかねない「コンプラ社会」の生き方

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【全2回(前編/後編)の前編】

 俳優の佐藤二朗と橋本愛のトラブルは、改めてコンプライアンスの“重圧”を知るきっかけになったのではあるまいか。悪気があろうとなかろうと、誰もが突然“加害者”にされかねない社会。加速し続けるコンプラ事情の最前線から、あるべき生き方を探る。

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 地域密着型で、患者からの信頼が厚いその歯科医院は、職場環境もアットホームだった。従業員同士の付き合いも深く、スタッフの誕生月にパーティーを開くのが恒例になっていた。

 あるとき新しい女性スタッフを雇うことになった。しばらくしてこのスタッフの誕生会を開こうとすると、彼女は「誕生会は結構です」と院長に言った。ほかのスタッフに年齢を知られるのがイヤだとし、「エイジハラスメントにあたるこうした催しを奨励するのはおかしい」と院長を批判した。ちなみに、エイハラとは年齢を理由にした差別や嫌がらせのことである。

“本人がイヤなら”と、院長は当然引き下がった。だが、彼女は続けて「ほかのスタッフの誕生会もやってはいけない」と、驚愕(きょうがく)の主張に及んだ。そうした会に自分は行かないが、自分が行かないパーティーがあると疎外感を覚える、これはパワハラだ、というのがその理由だった。アットホームだった歯科医院の雰囲気は次第に殺伐とし、以後、この女性スタッフが退職するまで、誕生会が開かれることはなかった……。

しっかり対応しないと「セカハラ」に

 本来は〈法令遵守〉を意味するコンプライアンスが近年、現代社会の“支配者”として君臨しているかに感じる向きも多いだろう。実際、職場や学校など、あらゆる組織が日常的にコンプラと向き合っているはずである。とりわけ、コンプラ違反の“代表選手”たるハラスメント行為は、たちまち糾弾の対象となる。

「歯科医院の例で主張される“誕生会がエイハラ”というのは、ピンとこないですよね」

 そう語るのは、当の歯科医院から相談を受けた社労士の野崎大輔氏である。

「むしろ女性スタッフの主張こそ、なんでもないことを“ハラスメントだ”と訴えるハラスメント、つまり“ハラハラ”に該当するように思います。しかしどんなに非常識な訴えであっても、企業のコンプライアンス部門や人事・総務の担当者はきちんと話を聞かないといけません。しっかり対応しないと今度は“セカンドハラスメントだ”と言われかねないからです」(同)

 セカハラは二次的なハラスメント被害を指す。

「“通報”があった以上は、いかに常識の範囲内の行動であっても、当事者には“気を付けて”と伝えなければならない。多くの人はこれで萎縮してしまい、それまで円滑だった周囲とのコミュニケーションを取りにくくなる、ということが珍しくありません」(同)

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