「出身地を尋ねるのもNG」「タバコ吸いました? スメハラです」 誰しもが「加害者」にされかねない「コンプラ社会」の生き方
“タバコ吸いました? スメハラになるので気を付けてください”
前出の野崎氏が語る。
「ある女性をコンプラ専任社員として雇った企業は、当初“プロ”を頼もしく思ったそうです。が、間もなくその女性は非常に細かいことまでハラスメント認定するようになりました」
彼女はハラスメント研修でこんな“講義”をした。
「女性の部下を直視するのはセクハラになりかねないとくぎを刺した上で、“どうしても見つめる場合は3秒以内にしてください”と指導していました」(同)
もちろん、研修ではない時間も目を光らせている。
「15分前に喫煙所でタバコを1本吸っただけの男性社員に“タバコ吸いました? スメハラになるので気を付けてください”と注意していたそうです」(同)
スメル(におい)ハラスメントというわけだ。
やがて、思いがけない怒濤の展開を迎えることに。
「これでは仕事にならないということで、当の女性社員に対する苦情が出るようになった。そこで人事部長が“ちょっと厳し過ぎやしないかという声もあるので、少しお手柔らかに頼むよ”とやんわり言いました。すると女性は“問題を隠蔽(いんぺい)するつもりですか!”と激怒。人事部長の発言をただちにパワハラ認定し、顛末書を社長に提出、すべての管理職対象の会議が開かれる事態に至りました」(同)
「仕事を教えるということ自体が本質的には現在やっていることを否定する行為」
なぜこんなことになってしまうのだろうか。
企業の危機管理に詳しい山内洋嗣弁護士が解説する。
「最近はオーバーコンプライアンス、つまりコンプライアンスの過剰対応による弊害が増えてきているように思います。現在の30代後半~60代は、上の世代からパワハラを受けてきた世代です。自分の若い頃の常識のまま部下を指導すると、ハラスメントとして訴えられてしまうジレンマに陥っています」
つまり、参考になる指導法がないわけである。
「これだけコンプラ違反が問題視される状況では、部下に強く言えない、強く言えないから部下が動いてくれない……という状態に頭を抱える中間管理職の人たちがたくさんいます」(同)
思い当たるフシもあろう。
「どんなに言い方に気を付けても、仕事を教えるということ自体が本質的には現在やっていることを否定する行為です。いま20点の人に50点の仕事をしてもらえるよう指導することは、20点の状態を否定することになる。それを自覚している管理職は、指導や指示に際して過度に萎縮してしまいがちです」(同)
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