「パパ。私、結婚するから」20歳娘が突然宣言、選んだ相手はまさかの… 「おまえはオレの娘を女として見ていたのか」
雄二さんとの会話で…
不登校が3週間ほど続いたとき、紘絵さんが雄二さんを呼んだ。慎太さんは、雄二さんに助けを求める気持ちがなかったことに気づいた。
「雄二は確かに幼なじみで親友だけど、僕は子どもたちが雄二に懐くのを、心の底ではよく思ってなかったんですよね。たぶん嫉妬だと思う。オレを差し置いて、雄二が父親面するのは嫌だった。父親面なんかしてないんですが、オレより他人の男に懐くなよという気持ちがあったんじゃないかと思う」
雄二さんはすぐにやってきた。ドアの外から声をかけると娘はドアを開けた。それから2時間ほどたち、娘が出てきて、「心配させてごめん」と言った。紘絵さんは、「いいから。みんなでごはん食べよう」と盛り上げた。
「何を話したんだと雄二に聞いたら、『特に。オレが子どもたちに会えないつらさを聞いてもらった』と。娘はじっと聞いて、『ゆうじ、さみしいね』と言ってくれたのだそう。そこで雄二は『きみに話してもらえないパパとママもつらいぞ』と諭した。娘はハッとしたようだったそうです。そこで他クラスの先生への思いを一気に吐き出した。人が亡くなるという経験をしてなかったから、娘は命とは何なのかについて、必死で考えていたらしい。雄二は『考えることはいいことだよ。そういうときは本を読むといい。でもパパとママにとって最大の幸せは、きみが元気でいることなんだ』と言ってくれた」
10歳であんな複雑な感情が
翌日の夜、娘はこれまでのことを話してくれた。慎太さんも紘絵さんも先を急がせることなく、黙って聞いた。仕事が忙しいからって、きみのことを軽く考えていたわけではないと慎太さんは言った。紘絵さんも、言いたいことがあったら何でも言っていいんだから、あなたたちより大切なものはないんだからと娘の目を見た。
「10歳であんな複雑な感情を抱くんだなと驚きました。僕なんか生きることについて考えたのは高校生になってからですよ。紘絵の言うとおり、娘は利口すぎるし繊細すぎる。気をつけなければと思いました」
その後、娘は雄二さんに薦められる本を次々に読んだようだ。人生訓が詰まった本ではなく、夏目漱石や芥川龍之介、あるいはユーモア小説とか動物記とか冒険記とか。さまざまなものを薦めてくれたようで、娘は視界が開けたというようなことを言ったという。
娘の高校受験を挟んだ2年間、慎太さんは単身赴任を余儀なくされた。そのころには娘はすっかり落ち着いて日常生活を楽しんでいたが、それでも心配だった慎太さんは週末は必ず自宅に戻った。
「息子も思春期を迎えていましたから。でも息子はろくに勉強もせず、サッカーに夢中。受験、大丈夫なのかと聞いても『なるようにしかならないよ』とヘラヘラしているだけ。こいつは何があっても生き抜いていくタイプだなと思っていました。紘絵は、あの子はあなたに似てるから大丈夫って」
単身赴任を無事に終え、家庭にも変わりがないことを確認して、慎太さんはホッとしたという。娘はその後、動物の研究をしたいと大学の獣医学部に入学した。
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