甲子園出場で紛糾…秋田代表「横手高校」は進学校なのか論争 卒業生は「東京と秋田では進学事情が違いすぎる」と指摘 成績優秀な生徒が“東京大学を受験しない”理由
野球部が57年ぶりとなる「夏の甲子園」出場を果たし、大きな感動を呼んだ秋田県立横手高校。「秋田有数の公立進学校」と報じるメディアもあったが、その進学実績をめぐってSNS上で議論が巻き起こっているという。
秋田県内には私立高校が少なく、公立高校が進学校の役割を担っており、横手高校はそのうちの一校である。ところが、「MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政の各大学のこと)にも行かないのか」「東北大学に数名受かった程度で進学校といえるのか」という声がSNSで上がっているのだ。
こうしたコメントに対し、同校の卒業生や秋田県民は猛反論を行っている。だが、筆者は秋田県を騒がせている“クマ問題”と同様、地元の実態を知らない人にとっては、なかなか理解が難しい問題なのではないか、と感じている。というのも、都市部と地方の進学事情が違いすぎるためだ。横手高校の卒業生である筆者が、できるだけ冷静に分析してみよう。【文=山内貴範】
【写真】全国の進学校の生徒が合格を目指す日本の最高学府「東京大学」の姿
進学校の定義とは
そもそも進学校という言葉には確固とした定義がないので、人によって解釈がわかれる。東京の“超進学校”と呼ばれる高校から東京大学に進学、卒業した知人の経営者にその定義を聞いてみた。すると、彼の基準では、「最低でも東京大学に毎年数人は受かっていないと進学校ではない」そうである。
つまり、ただ卒業生が大学に進学しているだけではダメで、東京大学や京都大学などの旧帝大に毎年合格者を出すのが進学校の条件であり、さらに私大は早稲田大学や慶応義塾大学といったブランド校、もしくは医学部などの偏差値が高い学部に受かっている必要があるというのだ。
なかでも、東京大学に毎年数十人の合格者を出している学校を、「超進学校」と呼ぶらしい。おそらく、SNSで「横手高校は進学校ではない」と指摘する人は、この経営者と同じような考えを持っているのではないだろうか。
2025年に公表された文部科学省の「各都道府県における高等教育の現状に関する調査研究」によると、2023年度の秋田県の大学進学率は全国最低の約40.1%であり、首位の東京都の約77.6%と比べると大きな開きがある。そうしたなか、横手高校の卒業生は大半が大学に進んでおり、秋田県内では間違いなく「進学校」といえる。
受験の文化がまったく違う
都市部と秋田県の進学面における違いとして、いわゆる“お受験”の文化、私立の進学校、そして学習塾の3つがない、あるいは圧倒的に少ないことが挙げられる。そのうえ、学校の選択肢も極端に少ない。秋田県南部在住で大学進学を志す中学生は、横手高校か、菅義偉元総理の母校・湯沢高校などを目指すしかないのである。
秋田県には、進学指導に特化した学習塾がほとんどない。大手の「駿台予備校」や「河合塾」に通うなら宮城県仙台市まで行かなければいけないのだ。そのため、横手高校の学生たちは日頃の授業の予習復習を行い、夏は学校が用意する夏期講習などを受け、授業動画などを使って独学するのが一般的だった。
横手高校に限らず、地方在住の高校生の受験勉強のスタイルはだいたいこんな感じである。受験生向けの授業動画がかなり普及したとはいえ、受験指導に特化した授業を受けることが難しい点で、地方勢はかなり不利なのではないだろうか。
また、公立高校の教師には転勤があり、これも私立高校と比べると不利といえる。横手高校で受験指導に熱心だった教師が、翌年には進学実績の低い高校に異動させられることもあったし、その逆も然りである。受験指導のノウハウが学校に残らず、継承されにくいこともデメリットなのではないだろうか。
[1/3ページ]



