「犬と暮らすと認知症リスクが4割減」 シニアのためのペット講座 「飼い主が先に亡くなるケース」への備え方は?
高齢者が安心してペットと暮らし続けるための仕組み
そうした中、新聞記事で見つけたのが、「ペット後見互助会とものわ」だった。
「とものわ」は、飼い主が病気や事故、死亡などによってペットの世話を続けられなくなった場合に備える「ペット後見」の仕組みを提供している。植松さんは同会に相談し、契約を結んだ。
同会を運営する認定NPO法人「人と動物の共生センター」(本部・岐阜市)の代表で、獣医師の奥田順之(よりゆき)氏によれば、「多頭飼育崩壊の原因の一つに殺処分ゼロがある」という。
「殺処分ゼロそのものは、大切な目標です。ただ、殺処分の数だけ減らそうとすると、高齢や気性が激しいなどの理由で譲渡が難しい犬猫を保護施設で長期間抱え続けることになります。施設のリソースを超えて受け入れ続ければ、結果として動物の福祉が損なわれ、多頭飼育崩壊につながってしまうのです」(同)
奥田氏は、飼い主のいない犬猫の問題を「蛇口モデル」で説明する。このモデルは上下2段の蛇口からなる。上の段の蛇口「ペット産業」「飼い主」「野外で繁殖」が表すのは、飼い主のいない犬猫を生み出す原因だ。下の段の「殺処分」「保護施設等で飼育」「家庭へ譲渡」は、飼い主のいない犬猫が向かう先を表す。
「上の蛇口を閉めず、下の『殺処分』の蛇口を閉め、譲渡先も限られるとすれば、出口を失った犬猫が施設にたまり続けるのは当然です。必要なのは、行き場を失う犬猫を生み出す上流の蛇口を閉めること、そして保護された犬猫が適切な家庭や支援先につながる出口を広げていくことです」(同)
ペット後見は、この出口を広げるための一つの手段である。飼い主が元気なうちに、万一の時の引き受け先や飼育費用、譲渡の方針を決めておけば、入院や死亡後に犬猫が突然「飼い主のいない動物」として保護現場に流れ込むことを防げる。家族や近隣住民、医療・介護関係者が、行き場のない命を前に途方に暮れる事態も避けられる。
奥田氏は、ペット後見を「高齢者にペットを飼わせないための仕組み」ではなく、「高齢者が安心してペットと暮らし続けるための仕組み」だと考えている。保護団体の中には、高齢者への譲渡に「65歳以上はお断り」など年齢制限を設けるところもある(年齢は団体によって異なる)。たしかに飼い主が高齢であれば、病気や入院、死亡によって飼育が継続できなくなるリスクは高まる。しかし、年齢だけを理由に一律に断れば、ペットとの暮らしによって心身の健康を保てる高齢者まで、その機会を失ってしまう。
「高齢だからという理由だけで、動物と暮らす機会を奪ってしまうのは違うと思います。ペットと暮らすことで幸せになれる人はたくさんいますし、健康面でのメリットもある。大切なのは、リスクがあることを前提に、それをどう小さくするかです。ペット後見はそのための仕組みです」(同)
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