「犬と暮らすと認知症リスクが4割減」 シニアのためのペット講座 「飼い主が先に亡くなるケース」への備え方は?
ペットがいない人の月額介護費は、いる人の2.3倍
医師や家族に「運動しなさい」「人と交流しなさい」と言われ、最初はその気になって始めても、習慣として続けるのは難しいものだ。しかし、とにかく外へ行きたがり、散歩に行く素振りを見せるだけで大喜びする犬がいれば、飼い主はいや応なく玄関を出る。今日は気分が乗らない、少し面倒だと思っても、リードをくわえて見上げてくる犬を前にすれば、「仕方ない、少しだけ歩こうか」となる。その「少しだけ」が毎日の習慣になり、気付けば足腰を丈夫にし、人との会話を生み、生活のリズムを整えていく。
さらに介護費の抑制にもつながる可能性があるという。
「私たちの研究では、調査期間中、犬、猫などのペットがいない人の月額介護費は、いる人と比べて最大2.3倍でした。これはペットが高齢者に与える健康効果が、社会保障費の抑制という形で、社会全体に還元される可能性を示しています」(谷口氏)
自分にもしものことが起きた場合……
ならば、ペットを飼っていない高齢者は今すぐ「新たな家族」を迎えるべきだ、と言いたいところだが、話はそれほど単純ではない。
犬や猫と暮らすことが高齢者の心身に良い影響を与えるとしても、それは飼い主が適切に世話を続けられることが前提である。餌を与え、水を替え、トイレを掃除し、共に散歩に出かけ、病気になれば動物病院へ連れて行く。どれも当たり前の世話だが、一人暮らしの高齢者にとっては年齢を重ねるほど負担になる。足腰が弱れば散歩が、認知機能が低下すれば餌や薬の管理が難しくなる。入院や施設入所が必要になれば、ある日突然、ペットのすみかが失われる。
実際、独居の飼い主が急きょ入院した結果、無人の家で愛犬が1週間も糞尿まみれの状態で放置されたり、飼い主の死後、家族に引き取りを拒絶され、医療・介護関係者が引き取らざるを得なくなった、などのケースが報告されている。
冒頭の植松さんも、自分にもしものことが起きた時、愛猫が取り残されてしまう事態を懸念していた。息子たちは遠方で暮らし、住環境の都合から引き取りは難しかった。また、既存の少なからぬ動物保護団体や施設は慢性的な人手不足や資金難に悩まされ、受け入れ能力の限界に近い状態にあった。そのため、犬や猫の日常的な世話や医療などが行き届かなくなる「多頭飼育崩壊」に陥っていることも植松さんは知っていた。
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