認知症の高齢者の資産260兆円が狙われている! 「被害者の8割がだまされた認識なし」 悪徳業者の手口と防ぎ方は?
任意後見をうまく利用できているケース
私の男性患者さんで好例があります。
その方は、自分で選んだ司法書士に任意後見人になってもらい、「長谷川式簡易知能スケール」で20点を切ったら、制度の利用開始と決めていました。長谷川式簡易知能スケールとは、認知機能を測る検査で、30点満点のうち20点以下で認知症の疑いありとされています。
男性患者さんはお酒が好きで、若い頃から京都の祇園に通っていました。そのため、司法書士に、認知症になっても週に1回程度は祇園に出かけさせてほしいという要望を伝えていたのです。
現に、いまも通っているようで、先だって診察にいらっしゃったときに、「祇園に行き過ぎちゃって、司法書士に怒られました」なんてことをおっしゃっていました。長谷川式簡易知能スケールで20点を切ったくらいなら、十分に祇園に通えます。この方は、奥さまがすでに認知症でホームに入所されていて、お子さんはいらっしゃいませんでした。そこで、任意後見を利用されたのです。
「物忘れ協定」
目下、身寄りのない「お一人さま」の増加に伴い、その備えとして、「高齢者等終身サポート事業者」が注目されています。
買い物の同行や生活に必要な物品の購入など日常生活への支援、生活費や医療費、家賃、公共料金の支払いなどのサポートが事業者から受けられます。加えて、死亡時には火葬の手続きや遺品の整理なども行ってもらえます。
大々的にテレビCMを展開している事業者もあり、都市部での利用が多いようです。しかし、トラブルも尽きません。高額な契約を結ばされた上、うたわれているサポートが受けられなかったり、解約しようとしても返金されなかったりといったことがありました。中には、高齢者に対し、事業者が自らを遺言執行者にするよう強要したケースまであったと聞きました。
これまでは、業法による一元的な許認可や監督の枠組みがなく、契約内容や解約、預託金の管理などを巡るトラブルが相次いでいました。そのため、内閣府などが中心となり、2024年6月にガイドラインを作成したのです。ですが、いまもって、業界参入に必要な許認可はなく、包括的に規制する業法はまだ整備されていません。ガイドラインを遵守するかどうかは、事業者次第です。
かといって、業界への信頼を得ようと、立派な活動をしている事業者も少なくないので、その見極めが必要だと思います。
結局のところ、認知症への備えとして、なかなか万全なものがないのが実情です。
しかし、せっかく築き上げたものをだまし取られることがないように、備えておくに越したことはない。そのためには、なにより認知機能低下の早期発見が欠かせません。
そこで、私がお勧めしたいのが、ご高齢のお友だち同士で結ぶ「物忘れ協定」です。
息子や娘から「お父さん、認知症だと思うから病院へ行こう」と言われると、どうしても親は反発し、親子関係に亀裂が入ってしまうことがあります。ですが、同じ高齢のお友だちからだと、割と素直に受け入れられるようです。
実際、私の元にも、お友だちから認知症ではないかと言われて受診に来ました、という人が時折おられます。
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