認知症の高齢者の資産260兆円が狙われている! 「被害者の8割がだまされた認識なし」 悪徳業者の手口と防ぎ方は?
対人接触型のトラブルが
アンケート調査の結果、認知障害の重症度によって、被害パターンに違いが見られることが分かりました。MCIでは、ある程度、日常生活の自立ができています。自分で買い物をしたり、インターネットで品物を購入したりと、経済活動も比較的活発です。そのため、通信販売やパソコン不具合などのサポート詐欺、架空請求のような非対面型の被害に加え、訪問販売や電話勧誘、住宅修理、訪問購入といった対人接触型のトラブルが目立ちます。認知障害の重症度が上がってくると、自宅訪問型の受け身のトラブルが増えるようです。貴金属の押し買いやリフォーム詐欺などです。なにより衝撃的だったのは、被害に遭った高齢者の8割がだまされたという認識がなかったことでした。
第一の防波堤
認知症やMCIの方たちが、消費者被害に遭うことを防ぐにはどうしたらいいのか。
私は、第一の防波堤として、訪問診療や介護など訪問系の職種の方々に期待したいと思っています。高齢者の自宅を訪問したときに、謎の契約書がテーブルに置いてあったり、本人が絶対に使いそうにない電化製品がいくつも並んでいたりといった異変に気付く機会がきっと多いはずです。
訪問系の職種の方の通報をもとに、われわれ、医療福祉関係者も関与し、さらに、消費生活センターと連携することで高齢者の被害回復がスムーズに進むことがあります。ですが、アンケートの26例でも、消費生活センターと連携できたのは3割ほど。医療福祉関係者だけで対応策を見つけようと右往左往してしまっている傾向が否めません。今後は、もっと消費生活センターと連携を深めるべきだと考えています。
一方、高齢者ならどなたでも訪問系のサービスを受けられるわけではありません。自分の足で歩いて病院に行けるような人は利用できないのです。その場合、やはり家族や身近な人が高齢者を気にかけるしかありません。子どもの立場からすると、せめて年に2回くらいは親元を訪ね、銀行の通帳などを確認するというのも一つの方法です。しかし、この方法は「生きているうちから遺産狙いか!?」などと親からあらぬ反発を招き、関係がギクシャクしてしまうことがあります。
ですから、私の母もそうしてくれているのですが、親の方から、「通帳はここに置いてあります」「保険はどこそこに入っています」ということを子どもに対し、事前に伝えておくのが最善ではないでしょうか。
家族が勝手にキャッシュカードを使い続けると……
ただ、最善であるがゆえに、親が認知症になったときに、息子なり、娘なりが親のキャッシュカードを管理し、現金を引き出していることが大半だろうと思います。病院に通院している認知症患者の家族に、アンケートを実施したことがありました。その結果、7割の家族が認知症になった方のキャッシュカードを使い、介護費用に充てたりしていたのです。しかし、本人の意思確認が十分にできないまま家族がキャッシュカードを使い続けると、金融機関の規約上の問題や、相続時に私的流用を疑われるリスクが生じます。
この問題の解決策として、「三菱UFJフィナンシャル・グループ」が始めた「予約型代理人サービス」という金融サービスがあります。私が理事長を務める一般社団法人「日本意思決定支援推進機構」と共に、制度設計を行いました。現在、みずほ銀行も取り入れており、ゆうちょ銀行では「投資信託解約委任サービス」なども導入しています。この金融サービスは、事前に高齢者が口座の管理を任せる代理人を指定するもので、親族やパートナーでも代理人になれます。高齢者の認知機能がある程度低下したところで、医師が診察し、その結果を銀行に提供します。その後、代理人が口座を管理できるようになります。家族による不健全な口座管理を解消しようという金融サービスです。
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