生徒の自主性を重んじる時代になぜ“校内暴力が12万件超”で過去最多に? 「落ちこぼれ」と「吹きこぼれ」が教室にあふれる日本型教育の“機能不全”
2026年の10大ニュースに「暴力・いじめ動画のSNS拡散」が選ばれる可能性は高いのではないか。警察庁がXに「SNS上で、児童による暴力行為等の動画が投稿・拡散される事案が相次いでいます」とポストしたのは1月22日のことだった。栃木県立高校で男子生徒がトイレで別の生徒に暴力を振るう姿が動画に撮影され、これが昨年12月にXなどのSNSで拡散したのが発端だった。(前後編の前編)
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【詳細なデータを見る】中学生でも高校生でもなく…“いじめ”の件数が激増しているのは実は「小学生」だった。いじめを認知した学校の割合は衝撃的な数字に
1月には大分市立中学と会津若松市立中学の生徒による暴力動画が拡散したほか、熊本県内の動画が拡散した問題では県警が男子中学生を傷害容疑で逮捕。栃木県立高校の事件も2月に県警が男子生徒を傷害容疑で書類送検している。
文部科学省は昨年10月、「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」を発表し、教育関係者だけでなく多くの国民に衝撃を与えた。
小・中・高校で暴力行為は12万8859件発生し、前年度から1万9872件増加。増加率は18・2%に達し、過去最悪の数字となった。
暴力の増加が悪影響を与えていると考えられるのが、いじめと不登校だ。同じ調査によると、いじめも76万9022件で過去最悪。不登校も小学校と中学校の合計数が35万3970人と過去最悪を記録した。
痛々しいのは自殺者の数だ。厚生労働省は1月、昨年の年間自殺者数を発表。1978年の統計開始以来、過去最少の1万9097人だった。ところが、小中高校生だけは前年より3人増えて532人と過去最悪を記録した。内訳は小学生10人、中学生170人、高校生352人。大人の自殺は減少しているにもかかわらず、子供の自殺は増えているというわけだ。
件数増加の背景
教育評論家の親野智可等氏は、公立小教諭として23年間勤務した経験を持つ。親野氏は学校の暴力が過去最悪に達していることについて、「まさに深刻な状態です。学校というシステムが制度疲労を起こし、機能不全に陥っていることがよく分かります」と言う。
「昔と比較すると今の教育現場は、いじめや暴力行為を積極的に認知するようになり、そのため件数が増加したという点も重要でしょう。昭和の時代、『私のクラスでいじめは全くありません』と断言する担任の先生は珍しくありませんでした。『全くない』という先入観が災いし、見落とされたいじめや暴力行為はたくさんあったと考えられます。また2000年代までは、いじめは『自分より弱い者に対して一方的に、身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じている』などと定義されていました。そのため認定のハードルが非常に高かったのです。ところが2013年に『いじめ防止対策推進法』が制定され、被害者の主観を尊重するように改められました。この結果、いじめや暴力行為の認知件数が良い意味で増えたと考えられます」
そもそも19世紀に欧米の先進国が学校教育を実施したのは、産業革命と国民国家の誕生が背景にある。
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