学校からプールが消え…“泳げない子ども”が増えている 「クロールで25m泳げず」小6が約半数という衝撃

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OECDによる警鐘

 国際機関の経済協力開発機構(OECD)は、定期的に各国におけるスキル開発や教育・訓練に関する国際比較報告書「OECDスキル・アウトルック(OECD Skills Outlook)」を公表している。2023年度版では〈新たな環境条件に適応するためには、自然界への理解と、泳ぐ、自転車に乗るといった身体技能の重要性が高まる〉と警鐘を鳴らしている。

「意外かもしれませんが、OECD加盟国の15歳以上で“自力で泳ぐことができる”と回答した割合は、北欧のスウェーデンやノルウェー、フィンランドが9割以上に達しています。また、アメリカやイギリス、ドイツ、フランス、スペインなども8割を超えています。先進国が軒並み高い水準を示す中、日本は62.5%と139か国中の41番目。OECD平均の74.8%を大きく下回っているのです。報告書は同時に“海面上昇や台風、大雨、津波などによる水害への対策として泳ぐ力が大切”と指摘しています。泳ぐ力を身につけることは、災害時はもちろんですが、水遊びの際にも自分や周囲の命を守るために必要不可欠な力ですから」

自治体の厳しい財政事情

 改めて、松井教授が日本で水泳の授業が軽視される傾向にある理由について指摘する。

「全国の自治体は財政的に苦しいところが多いので、本来はプールの維持管理に費やされるべき施設整備費などが、ほかの教育環境整備の費用に回されるケースが増えていることも影響しています。タブレット端末の導入、それに伴う校内通信ネットワークの整備のほか、猛暑に対応したエアコン設備の拡充と、それに伴う電気代もバカになりません。プールだけでなく、校舎の外壁補修やトイレの洋式化、バリアフリー、地域によってはエレベーターの設置もあります。避難所となる体育館の整備や非常用電源の確保といった地域の災害対策も必要です。夏季しか使用しないプールへの支出の優先順位が下がっていることも、水泳教育を軽視する学校が出始めた要因でしょう。台所事情が苦しいことは理解しますが、ここはぜひ、文科省がしっかりと指導力を発揮して、全国の小中学校に水泳も人間にとって必要かつ大切な基礎教育であると伝えて欲しい」

泳ぐ力は水の中に入ってこそ

 さらに水泳授業の意義を次のように指摘する。

「水中における自分の身体の動かし方は、実際に水の中に入ってみないと理解できません。水の冷たさや身体が感じる水の抵抗、身体の動かしにくさ、水中での息苦しさなどは、幼少期に実感として学ぶからこそ、その記憶が大人になってからもずっと残り続ける。教科書を開いて先生の解説を聞いたところで、それは単なる知識に過ぎません。水泳は実際に身体を動かす体験に裏打ちされてこそ、初めて子どもたちの能力として身につくのです」

自覚させたい自分の「泳ぐ力」

 夏場はとくに、学校が夏休みに入ると、家族で海や川などに涼を求めて出かける機会が増えてくる。

「子どもでも大人でも、泳ぐ能力には個人差があって当たり前です。うまい子は少し教えただけで、それをやってのけますし、そうでない子もいます。国語や算数でも同じことが言えますが、大切なのは、子どもたちに自分はどれくらい泳げるのか、あるいはどれくらいしか泳げないのか、ということをしっかり自覚させること。例えば、家族や友人たちと川に遊びに出かけた際、泳ぎの得意な子は水を恐れず、ある程度の水深がある場所でも楽しく泳げるでしょう。ところが、泳ぎに自信がない子、泳ぎが得意ではないことを分かっている子は、深い場所に危険を感じて、浅いところでしか遊びません。自分の泳ぐ力がどのくらいなのかを理解していれば、友人につられて水深がある場所に行くことを踏みとどまれる。“危険を感じてためらう”ことが命を守るためには極めて重要な感覚なのです」

 水泳は命を守るための大切なスキルだ。それこそが、子どもたちが泳ぐ力を身につけるべき最大の理由であることを忘れてはいけない。

デイリー新潮編集部

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