トランプ大統領のゴリ押しをFIFAは受け入れたのか…行き過ぎたW杯の商業主義は“サッカーのルールすら変える”

  • ブックマーク

トランプ大統領が競技に介入し、FIFAもこれを受容した?

 トランプ大統領は、インファンティーノ会長に抗議の電話をしたことを公然と語っている。インファンティーノ会長も電話での会話を認めた。政治家ましてや大統領がそのような介入をすべきでないという正論はトランプ大統領には通じない。バログンの出場が叶ったことをまるで自分の手柄であるかのようにトランプ大統領は誇らしげに語っている。

 まさに、政治のスポーツへの介入。スポーツ界、スポーツを愛する者たちが大切に守り続けてきた倫理観もスポーツマンシップもトランプ大統領の中には存在しないのだろう。いや、トランプ大統領の強硬な姿勢は、「バログンに対する判定そのものが間違いであり、それゆえ出場停止も本来は存在しない」という固い信念に基づいている。それはトランプ大統領なりのスポーツの公正さに貫かれているのだろう。

 大半のスポーツ選手やファンは、判定の誤り、様々な理不尽に胸をかきむしった経験を持っている。時にはそんな誤審や理不尽を受け入れなければならないのがスポーツの現実だとわきまえ、それに従うことでスポーツは成り立ってきた。

 しかし、そんな理不尽は認めない、間違いは間違いだと強硬に主張するトランプ大統領は、ある意味で、スポーツの悪しき風習を打破する改革者と言えるのかもしれない。

リーダーシップを発揮しないインファンティーノ会長

 一方、インファンティーノ会長は、「開催国の大統領と電話で話してはいけないのか」と開き直っている。「自分は指示していない。FIFAの独立した機関の判断だ」と会長自身の指示や関与を否定している。

 この対称は興味深い。トランプ大統領は強烈なリーダーシップをアピールし、インファンティーノ会長はリーダーの関与を否定することで問題の鎮静化を図っている。大会前、イラン代表選手団の15名がアメリカから入国を拒否された時も、インファンティーノ会長に援助を求めたイラン選手団の要望を受けてアメリカ政府と交渉するなどの努力をしなかった。

 水面下では、強力なリーダーシップを発揮し、FIFAの収入を2026年には約90億ドル(約1兆4600億円)にまで上昇させ、自らの報酬も就任後の約8年で初任給128万ユーロから527万ユーロと4倍以上に増額させた剛腕が、厳しい局面になると矢面に立たない。

 私はインファンティーノ会長が本来すべきことは、トランプの機嫌取りでなく、「FIFAの独立した機関の判断だ」とうそぶくことでもなく、「判断した独立機関に会長として再考を指示した。そうでなければ、世界のファンの理解を得られない。これはスポーツの公平さを脅かす危険な決定だ」と言ってほしかった。

次ページ:巨額ビジネスに舵を切ったFIFAの思惑

前へ 1 2 3 4 次へ

[2/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。